磊磊落落
……。
「あり?そー君どうし……。」
「雨……?」
「……。」
「おい雨!どうした!?」
目の前にいる雨は俺を見ているが、視点が明らかにずれていておかしい。
「雨!」
「……ん。そー君……。」
「大丈夫か?」
「大丈夫、だよ?あれ?どうかしたかな?」
「は?」
どうかしたかは俺の台詞だ。
いきなり現れてぼーっとされたらどうかなったと思っちまう。
「まあそうなんだけど。ホントにどうしたのかな。」
「俺に聞かれても……。それより何か用か?」
「んん?用があったのはそー君でしょ。もう終わったの?」
「終わった?」
一体何がだ?
何か終わらせなきゃならん用でもあったか?
「……あれ?そういえば用って何だろね。」
「だから俺に聞かれても。」
でも何だろうか。
はっきりと思い出せる訳じゃないし、何かを忘れているという訳でもないが。
何か大切な物が無い様な、喪失感みたいなもんがある気がする。
「……でもそー君。『読み取り機』で考えを読んでも何も無いよ?そんな大切そうな物。」
「そうなのか?」
人の記憶が無くなる事は基本的にはない。
記憶を引き出せなくなる事はあっても、蓄積されたそれは無くならないんだ。
だから俺が思い出せなくても、雨が俺の無意識に埋もれている考えを読み取る事は可能な筈。
なのに何も無いって事は、その無意識からも外れたどうでもいいもんだって訳だ。
「あーでも一つだけ……あると言えばある、ね。」
「お?何だ?」
「言っていいのかな……。でも知ってるって事はもう聞いてる訳だから良さそうかな。」
「何だよ。勿体振ってねえでさっさと教えろよ。」
「……まあいっか。でも怒らないでね。そー君のお母さんを殺す様に―――」
瞬間、頭の中がぐちゃぐちゃになった。
そうだ。
俺は、鞘風に教えられた。
俺が探し出し、そして殺してやると思っていた奴の事を。
「……立木規爺。」
タチギノリヤ。
俺の母、実母を殺す事をバンビーノに依頼した男。
俺が殺したい男。
鞘風が俺に……。
「鞘風って確か宗教団体の教祖様よねー?何でそー君そんな人と話せたの?」
「……そりゃ会ったからだろ。あれ?でも何で会ったんだ?」
畳の部屋で俺は鞘風と話した。
馬鹿でかい屋敷、その中にいた大勢の人。
しっかり覚えているのに、何かが抜け落ちている気がする。
「……。」
「雨?」
「ん?大丈夫だよ?」
……疲れてるのか、雨はまたぼーっとしていた。
「……帰るか。」
「そうだね。」
何かやたら疑問文が多くなっちまった。
……立木規爺。
絶対に見付けだして殺す。
それだけは疑問でも何でもない。
久しぶりの更新になってしまいました
申し訳ない




