殲滅開始
「では爽君。一番槍任せたよ。」
「あい分かった。」
門の前まで移動して中を覗く。
ま、そんな事をしなくても誰もいない事は分かっている。
音をたてない様注意して門を開け中に入る。
[雨。一階にいる敵はどの辺りだ。]
[正面左の部屋に2人。そっちは一般人だね。アート使いは奥の部屋にいるよ。]
[分かった。]
なら、先ずは近くの一般人から一刀両断だ。
来い『凪』。
ロッカーから『凪』を取り出す。
次いで『剣』。
「……さあ味わえ。」
壁に向けて一閃。
居合い切りで一撃。
何て事はない。
さして手間を取る訳でもなく、中にいた一般人は頭と胴体が別れ死んだ。
[鮮やかねー爽君。誰も気付いてないよ。]
[オーライ。]
二人を殺した部屋の窓を斬って中に入る。
当然音をたてず。
奥の部屋に一人、アート使いだったな。
[あ、待って爽君!]
「おいヤヒア、前に言ってた―――」
「っ!」
「な、あが―――」
いきなり入って来た男の胸に『凪』を突き立て、左手でその口を押さえる。
刃は背を抜け、壁まで貫きそこでやっと止まった。
「う、ぐお……!」
「……煩い黙れ。」
右手を『凪』の柄から放し、新たに召喚させたただのナイフで頸動脈を断ち切る。
「あ……。」
断末魔をたてさせず、ただ血が床を、壁を汚す音だけが部屋に響く。
[……ふー。おい雨。]
[ごめんごめん。奥のアート使いに気を回し過ぎてたよ。でもこれでまた一人減ったし、結果オーライ♪]
[ったく。次は気をつけろ。]
だがまあ雨の言う通り結果オーライだ。
これで残りは15人。
壁と死体から『凪』を抜き一振りし、血を払う。
開けっ放しのドアから外を盗み見る。
……どうやらアート使いには気付かれていない。
他に人の気配も、ん。
[マラッティーア。地下への入口は多分入ってすぐ右手だ。階段がある。]
[了解。爽君が残り一人を殺し次第行くとするよ。]
残り一人、アート使い。
どんな力を持つか知らねえが、一撃で決めればそんなもん関係ない。
軋む床に注意を払いつつ、壁に沿いながら奥を目指す。
[此処だな雨?]
[……うん。爽君の意識と敵の意識が合わさってる。そこでいいよ。]
[分かった。]
壁に手を、耳を当て、中の相手との大体の位置を計る。
壁はそこまで厚くない。
敵の呼吸、心臓の音を感じられる。
中々広い部屋だ。
敵までの距離はおよそ2m。
ぎりぎり『凪』を届かせられる距離だ。
壁から手と耳を放し、立ち上がる。
鞘に仕舞った『凪』を握り構え、あとは同じ。
「ふ!」
壁に向けて一閃。
……打ち損じただと?
振るった刃にまるで感触がなかった。
[爽君!]
[分かっている。]
壁から飛びのき、ロッカーから『茨』を5本召喚し『剣』をかける。
それを壁に投げ付けると、壁を空気とも感じぬまま『茨』は部屋の中へと消えた。
「……。」
相変わらず部屋の中から物音はしない。
……敵にこの一撃すらいなされていたなら、多分『茨』は中の壁すら貫いて外に行っちまっただろう。
後で回収しなけりゃな。
[ダメ爽君。中の敵は死んでない。]
[……だろうな。]
何にしても、少なくとも、中にいる奴には俺がいる事がばれている。
なら、可及的速やかに部屋の中の奴を殺す。
ドアを切り裂き、素早く部屋の中に入る。
中にいたのは、白人?
「はああああ!」
「ふむ……。」
「ぐう?!」
部屋に入った勢いをそのままに敵に『凪』を振るったが、人差し指と中指、たったそれだけで必殺の刃は止められた。
剰え、右足で俺の腹を蹴り、更なる追撃を許さなかった。
「バンビーノだな。よろしい。」
白人が右手を鳴らすと、部屋の内側に鉄板が落ち、ドアを、窓を、俺と隔てた。
それはつまり、密室が作られたという事だ。
「一人で討ち入り……いや、外にも何人かいるか。」
「……。」
鉄板が落ちた音、地下まで響いている可能性が高い。
なら……。
[マラッティーア。]
[分かった。そこは任せる。]
名前を呼んだ一言で、マラッティーアは状況を把握してくれた。
全く、切れ者の隊長を持つと心強い。
「……と言う訳だ。お前は此処で殺させてもらうぞジェニトーレ。」
「それはこちらも同じ。バンビーノ……いや、コード剣。」




