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アートバンビーノ  作者: 凩夏明野
第二章-狩-
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殲滅開始

「では爽君。一番槍任せたよ。」


「あい分かった。」


門の前まで移動して中を覗く。

ま、そんな事をしなくても誰もいない事は分かっている。

音をたてない様注意して門を開け中に入る。


[雨。一階にいる敵はどの辺りだ。]


[正面左の部屋に2人。そっちは一般人だね。アート使いは奥の部屋にいるよ。]


[分かった。]


なら、先ずは近くの一般人から一刀両断だ。

来い『凪』。

ロッカーから『凪』を取り出す。

次いで『剣』。


「……さあ味わえ。」


壁に向けて一閃。

居合い切りで一撃。

何て事はない。

さして手間を取る訳でもなく、中にいた一般人は頭と胴体が別れ死んだ。


[鮮やかねー爽君。誰も気付いてないよ。]


[オーライ。]


二人を殺した部屋の窓を斬って中に入る。

当然音をたてず。

奥の部屋に一人、アート使いだったな。


[あ、待って爽君!]


「おいヤヒア、前に言ってた―――」


「っ!」


「な、あが―――」


いきなり入って来た男の胸に『凪』を突き立て、左手でその口を押さえる。

刃は背を抜け、壁まで貫きそこでやっと止まった。


「う、ぐお……!」


「……煩い黙れ。」


右手を『凪』の柄から放し、新たに召喚させたただのナイフで頸動脈を断ち切る。


「あ……。」


断末魔をたてさせず、ただ血が床を、壁を汚す音だけが部屋に響く。


[……ふー。おい雨。]


[ごめんごめん。奥のアート使いに気を回し過ぎてたよ。でもこれでまた一人減ったし、結果オーライ♪]


[ったく。次は気をつけろ。]


だがまあ雨の言う通り結果オーライだ。

これで残りは15人。

壁と死体から『凪』を抜き一振りし、血を払う。

開けっ放しのドアから外を盗み見る。

……どうやらアート使いには気付かれていない。

他に人の気配も、ん。


[マラッティーア。地下への入口は多分入ってすぐ右手だ。階段がある。]


[了解。爽君が残り一人を殺し次第行くとするよ。]


残り一人、アート使い。

どんな力を持つか知らねえが、一撃で決めればそんなもん関係ない。

軋む床に注意を払いつつ、壁に沿いながら奥を目指す。


[此処だな雨?]


[……うん。爽君の意識と敵の意識が合わさってる。そこでいいよ。]


[分かった。]


壁に手を、耳を当て、中の相手との大体の位置を計る。

壁はそこまで厚くない。

敵の呼吸、心臓の音を感じられる。

中々広い部屋だ。

敵までの距離はおよそ2m。

ぎりぎり『凪』を届かせられる距離だ。

壁から手と耳を放し、立ち上がる。

鞘に仕舞った『凪』を握り構え、あとは同じ。


「ふ!」


壁に向けて一閃。

……打ち損じただと?

振るった刃にまるで感触がなかった。


[爽君!]


[分かっている。]


壁から飛びのき、ロッカーから『茨』を5本召喚し『剣』をかける。

それを壁に投げ付けると、壁を空気とも感じぬまま『茨』は部屋の中へと消えた。


「……。」


相変わらず部屋の中から物音はしない。

……敵にこの一撃すらいなされていたなら、多分『茨』は中の壁すら貫いて外に行っちまっただろう。

後で回収しなけりゃな。


[ダメ爽君。中の敵は死んでない。]


[……だろうな。]


何にしても、少なくとも、中にいる奴には俺がいる事がばれている。

なら、可及的速やかに部屋の中の奴を殺す。

ドアを切り裂き、素早く部屋の中に入る。

中にいたのは、白人?


「はああああ!」


「ふむ……。」


「ぐう?!」


部屋に入った勢いをそのままに敵に『凪』を振るったが、人差し指と中指、たったそれだけで必殺の刃は止められた。

剰え、右足で俺の腹を蹴り、更なる追撃を許さなかった。


「バンビーノだな。よろしい。」


白人が右手を鳴らすと、部屋の内側に鉄板が落ち、ドアを、窓を、俺と隔てた。

それはつまり、密室が作られたという事だ。


「一人で討ち入り……いや、外にも何人かいるか。」


「……。」


鉄板が落ちた音、地下まで響いている可能性が高い。

なら……。


[マラッティーア。]


[分かった。そこは任せる。]


名前を呼んだ一言で、マラッティーアは状況を把握してくれた。

全く、切れ者の隊長を持つと心強い。


「……と言う訳だ。お前は此処で殺させてもらうぞジェニトーレ。」


「それはこちらも同じ。バンビーノ……いや、コード剣。」

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