阿弗利加旅行
「……いや爽君。確かに一杯持って来てねみたいな事は言ったけど、これは持って来すぎなんじゃないかな。それ下手すれば税関とかに引っ掛かるんじゃない?」
「はあ?バンビーノの飛行機で行くから問題ないんじゃねえか?」
「いや税関はバンビーノと関係ないし……。」
マラッティーアが動揺している所を初めて見た。
冷静沈着に見えるが、やっぱりガキはガキだな。
「まあいっか。お菓子そんなに好きなのかい?」
「このキャリーケースの中に入ってるのは何も菓子だけじゃねえぜ。カップ麺にインスタント味噌汁。こっちのクーラーボックスにはドライアイスと一緒に冷食が入ってる。」
「カップ麺にインスタント味噌汁に冷食?」
「言ってないから知らねえと思うが、俺は結構偏食なんだ。」
と、俺が暴露した所で雨がマラッティーアに何か耳打ちした。
「……何と言うか、君かなり甘やかされて育てられたんだね。」
「違うわ!色々トラウマがあんだよ!何言ったか知らんが適当な事を吹き込むな雨。」
「えー……。本当の事を言っただけだよ?」
馬鹿にしやがって……!
甘やかされた訳ではないのだ決して。
「あーはいはい。無駄話なら飛行機の中ですれば良いでしょ。早く行きましょうよボス。」
「そうだね。じゃあ皆、はぐれない様に付いてきてね。」
「あれれ……?」
どーしてこーなるの。
確かに付いてった筈なのに。
「どーして僕だけはぐれてるんだー!」
有り得ない有り得ない有り得ない!
こーいうのは多分雨ちゃんの本分でしょ。
僕がこーなるのはおかしい。
これはきっと罠なのだ。
政府もしくは僕の事が気に入らない誰かが仕組んだんだ。
前にテレビで見たもんね。
「都合が悪い事は全て政府の陰謀なのだー。」
「それは毎週火曜深夜26時28分から26時58分までやっている『ライターザン』の主人公の台詞だな!」
「!」
びくっり……じゃないびっくりした。
「……あんた誰?」
「ふむ!俺は千石勝汰!日本人だ!」
「……僕の独り言聞いてたの?」
「見たもんねとかぶつぶつ言っていたな!」
「あー……。」
何たる不覚。
僕の素は誰も知らなかったのに。
「さて!非常に申し訳ないがお前を殺す!」
「おまけにジェニトーレ……。はあ、もうやだ。」
顔に掌を付け下を向く。
そう、そして決め言葉はこれ。
「仕方ない殺そ。」