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アートバンビーノ  作者: 凩夏明野
第二章-狩-
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敵状視察

「じゃあそういう訳だから。君達も遅れない様にね。」


「了解だカピターノ。」


「ん……お休み。」


「僕も寝るのー……。」


「やれやれ。サエッタ、支払いは僕がしておくから、二人の面倒頼むね。」


「分かった。」


三人にもプリントを渡し席を立つ。

そして僕は思い出した。


「雨君にも渡さなきゃいけなかった。」


爽君に頼もうと思っていたのを失念していた。

やれやれ仕方ない、直接渡しに行くとしよう。

「……。」


高い所が好き。

そこにいれば鬱陶しい人の心が雪崩れ込んでこないから。

どうして人は嫌な考えばかり持ってるんだろ。

あいつが憎い、こいつが悪い、俺は正しい。

そんな人間ばっか。

……世界なんて滅びちゃえばいいんだって昔は思ってた。

子供は勘が鋭い。

あたしが他人と違う事を簡単に見抜き、そして敬遠する。

あたしは一人ぼっちだった。

それは凄く些細な事ではあったけど。

あたしにとって辛かったのは、その感情がダイレクトに伝わって来たこと。

そんなの子供が耐えられる訳がない。

あたしは壊れかけて、そんなあたしを見て周りは更に離れていった。

でも、そー君だけは違ったなー。

そー君のお陰であたしは今も……。


「……主母(しゅぼ)吏人(りひと)?変な名前だね貴方。」


屋上には誰もいない。

でも此処に来ている人達がいる。


「『ジェニトーレ』の一人で、19歳の日本人。アートは―――」


「か。驚いたねこりゃ。マジで人の心が読めるんだなてめえ。」


「女の子に向かって『てめえ』何て酷い事言うね。」


階段に続く扉から出て来たのは金髪の、見るからに不良みたいな男。

不良みたいなじゃなくて不良だね。


「うるせーよカス。気持ち悪いアートだな死んだ方が世のため人のためなんじゃね?」


「……。」


「か。どうやら意識してるみてえだな。ま安心してくれや。自殺する必要はねえ。俺が殺してやっからよかかか。」


「……間抜け。」


「あ?」


「間抜けって言ったんだよ主母吏人さん。読点の使い方を覚えた方がいいんじゃないかな。」


そー君も言葉遣いは荒いけどこんなじゃない。

もっとかっこいい。


「か。うっせーよゴミクズ野郎。」


「あたしは女だから尼ではあっても野郎じゃないよ。」


「ああ言えばこう言いやがって……ん?てめえ何かおかしくねえかそういや。考えが読めるっつって何で俺の名前とか分かんだよ。」


「……。」


どうして馬鹿ってたまに鋭くなるのかな。


「俺は心の中で自己紹介してた訳じゃねえし何で分かんだよおい。」


「……煩いなあ。」


「か。まあどうでもいいや。てめえ殺せば何の関係もねえんだからな。」


そう言うと、主母吏人は背中に結わえてあった鞘から昔なら確実に職質されるであろう長さのナイフを抜いた。


「ばれてると思うからよぉ自分で言うが、俺のアートは『毒使い』だ。今からてめえを毒に漬けて嬲り殺しにするからよ。」


「そうなの。怖いね。」


「……か。人を嘗めくさったその態度も切られりゃ代わるだろうな!」


主母吏人のナイフが紫色に染まっていく。

そんなの見せられたら、あたしじゃなくても何となく想像付きそう。

やっぱり馬鹿ね。


「さあてめえのその余裕こいた面を切り刻ん、いてっ!」


「……いつの間にか着いてたんだねー。」


「ごほ。探したよ全く。」


主母吏人が何を痛がったかと言えば、首筋に切られた爪が刺さったから。

爪を切ったのは誰か。


「か。あははははは!マラッティーア・ウォーモ!てめえもついでに殺してやる!」


「ごほごほ。それは無理な相談だね。ジェニトーレの一人なら生かしてはおけない。僕の部下にちょっかいを出したんだ。覚悟してもらおう。」

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