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アートバンビーノ  作者: 凩夏明野
第二章-狩-
14/68

紹介

「ふあああ……。それで、こんな朝早くから集めたのは何でか聞かせてもらおうか。」


朝早く。

これは今の時間を示す上でかなり正しい。

現在時刻午前5時。

……早過ぎだろどう考えても。


「ごほごほ。悪いね。どうやらまだ時差ぼけしている様で。まだ21時の気持ちなんだよ。」


「……それだけ日本語ぺらぺらで日本に精通してるっぽいのに時差ぼけとか嘘だろ。」


「いやいや本当さ。全然眠くない。」


ははははとか笑っているが。

それは単にこいつが早寝早起きなだけじゃねえのか。

何が悲しくて朝5時からファミレスで話さなきゃならんのだ。


「それで理由だけどね、新しく君が小隊に入っただろ?だから顔合わせを兼ねてそれぞれ自己紹介をしようと思ってね。」


「ふん。その割に俺と同じ新顔の雨がいないが。」


「雨君はもう彼らと会っているからね。それに、彼女には紹介する必要がないだろう。更に言うなら、彼女起きてくれなかったから。いや、正確には起きてはくれたが怒鳴られてしまった。関西弁で。」


……それは当然だろう。

午前4時に電話で起こされて怒らない奴はいない。

しかも雨は低血圧なのか寝起きの機嫌が最悪だ。

俺だって近寄りたくないし電話しようとも思わない。


「さ、話しが逸れたがそれも此処まで。自己紹介をしていこうか。じゃあ先ずはアリスから。」


「……ふぁい。私はアックアーりよ……ZZZ。」


「おいマラッティーア。」


「……。」


「あた!?」


無言で殴りよった。

女の子に対して何の躊躇も無く笑顔のまま拳骨をかましたぞこのボスは。


「さあアリス自己紹介を。」


「いや待てマラッティーア。何が時差ぼけだよ目茶苦茶順応してる奴がいるぞ!今気付いたがクレアって子も―――」


「ZZZ……いたっ!?」


「さあアリス。」


「……。」


最早言葉も出ない。


「ふあああ。かしこまりました。では改めて、おほん。私の名前はアックアーリョ・アリスレット。アリスで良いわ。17歳よ。アートは……水を使うって事だけ言っておく。よろしくね爽。」


「よろしく。」


「良い自己紹介だね。簡潔で完結。じゃあ次はクレア……。」


「いたっ!?痛いよリーダー!もう目は覚めたよ!」


「じゃあどうぞ。」


再度殴られたクレアも又ぞろ咳ばらいをして自己紹介を始めた。


「僕はクレアツィオーネ・マテリア16歳。何とでも呼べばいいよ。アートの名前は『チェッルラ』。……そうね、簡単に言えば原子を操れる力って所かな。」


「成る程。」


原子を操るね。

何となくだがクレアがあの時俺の背後に回れた理由が分かったぜ。


「はいよろしい。じゃあサエッタ、よろしく。」


「ああ。」


初めて見る顔の男だ。


「サエッタ・ディチェンブレ18歳。主にカピターノの護衛をしている。」


「かぴ……何だって?」


「カピターノ。イタリア語で隊長だよ。」


「アートは電気を操る『サエッタ』だ。これからよろしく頼む。」


「ああ。こちらこそよろしく。」


此処に来て初めての握手。

ふ、俺と同い年なだけあって礼儀を弁えている。

他二人のお子ちゃまとは違うね。


「じゃあ次は僕だね。マラッティーア・ウォーモ17歳だ。バンビーノ本部第一小隊の隊長をやらせてもらっている。アートは病気などを操る『マラッティーア』。改めてよろしくね爽君。」


「……。」


「どうしたんだい?今は何の病気にもかかっていないから安心していいよ。」


「別にそんな心配してるんじゃねえ。俺はな、お前が嫌いだ。」


「そういえば昨日そんな事を言われたね。」


でもねと、マラッティーアは続ける。


「世の中を渡っていくというのは嫌な事を受け入れる事に同義なんだ。嫌よ嫌よじゃ世の中は回らない。」


「……んな事は分かってる。」


「なら受け入れなきゃね。はい握手。」


「ち……。」


手を取られ、無理矢理握手させられる。

こいつ本当に俺より年下なのかよ。

どう見てもさっきのやり取りは、年上が年下を諭す図じゃねえか。


「じゃあ最後は爽君に自己紹介してもらおうかな。」


「はいはい分かったよ。御剣爽18歳。呼び方はどうでもいい。」


「ふあああああ……どうでもいいとはおざなりね。馬鹿でもいいのかしら。」


「お前が眠そうにしてなくて尚且つ男だったらぶん殴ってるからなアリスレット。アートは刃物を使う『剣』だ。言いたくはないがよろしく。」


「はい結構な自己紹介でした。さて、じゃあ顔合わせも済んだ事だし帰ろうか。」


本当にこれだけのために呼んだのかこいつは……!

何でこんな早くから呼んだんだ。

昼だろうが夜だろうが出来る事じゃねえか。

……いや、一応時差ぼけという大義名分があったか。

それも嘘だろうけど。


「帰っていいなら帰るぜ。」


「ああちょっと待って爽君。」


「何だよ。まだ何かあんのか。」


「はいこれ。」


手渡されたのは一枚の紙。

レシートじゃない。

学校とかで配られる紙、所謂プリントって奴だ。


「……?アフリカ?」


「そう。僕らは明日から一週間程アフリカに行く事になったからよろしくね。いやーそのプリント作るのに徹夜しちゃって。ならついでにこのまま渡そうと思って君達に電話……そういう訳だからよろしく。集合時間に遅れないようにね。」


自ら白状しやがった。

何が時差ぼけだよったく。


「へーへー分かりました。」


「書いてないけどお菓子は幾らでも持って来ていいからね。寧ろ持って来てね。」


「……。」


それには返事をせず、俺はファミレスを出た。


「……帰って寝よ。」

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