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アートバンビーノ  作者: 凩夏明野
第一章-病-
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「ごほ。いたっ。切りすぎた。」


パチンパチンと音がなる。

音を発しているのは爪切りで、それを使っているのはマラッティーア・ウォーモである。

しかし、それが切っているのは爪ではない。


「んー、これと言って目新しい物は無いな。」


「……相変わらず気持ち悪い趣味だな。」


「おやごほ。来てたんだね。別に趣味じゃないよ。」


薄暗い部屋の隅から声が一つ。

それは聞いた事があるようなないような。


「全く、感謝してほしいよね。爽君を引き入れるために悪者を演じたんだ。おかげで彼には嫌われてしまった。」


「演じたって、お前の素はあれだろ。無意識に残虐、それがお前の売りさマラッティーア。」


パチンと、相変わらず爪切りは音を発てる。

しかしマラッティーアの爪が短くなる事はない。


「人と話している時くらい爪切りを使うのは止めないか?痛々しくて見てられん。」


「別に痛くないよ。案外厚い物だからね。ご覧の通り血は出ない。」


「それはそうかもしれないが……う。やっぱりいつ見ても慣れない。」


「仕方ないだろ?食べなきゃストック出来ないんだ。」


そう言いながらマラッティーアは切ったそれを口に運び咀嚼する。


「やっぱり目新しい物はないね。」


又ぞろそう言うと、マラッティーアは爪切りを机の上に置いて立ち上がった。


「やっと止めてくれたか。」


「ああ。君も気付いているかもしれないけど、いい加減扉の外にいる僕のボディーガードさんが怒りそうだからね。」


「ふむ。別段敵対している訳でもないのに嫌われた物だな。」


「ふふ。君は気味が悪いからね。彼が警戒するのも当然だよ。」


「お前には言われたくないな。」


「それは失礼。」


言葉を交わしながらマラッティーアは扉に近付く。

そしてドアノブに手を掛けた所で思い出した様に相手に言う。


「ごほ。そう言えば君は爽君と知り合いなのかな?」


「……まあな。」


「そうかい。」


そう言って、マラッティーアは相手を置いて部屋を出た。


「カピターノ。」


「……君もいい加減呼び方を統一する方向に向かってくれないかな。」


部屋を出たマラッティーアを待っていたのはまた別の声だった。

若い、恐らくマラッティーアと大して変わらない年頃の男だろう。


「命令されれば何時だってあの胡散臭い奴を殺すぞ。」


「ああ無理無理。確かに君は強い。でもね、彼には敵わないよサエッタ。」


サエッタと呼ばれた男は苛立つ様に右手を壁に打ち付ける。

何度も何度も、中にいるであろう相手を威圧する様に。


「俺は奴が気に入らない。」


「まあまあ。彼は敵意を持っていないんだからそれで良いじゃないか。」


「良くない……と思う。何時手の平を返すか分かった物じゃないだろ。」


「……そうだねごほ。その時はその時さ。さ、そろそろ行こう。明日からまた忙しくなるからね。」


そしてマラッティーアは廊下を歩きだし、サエッタはその後ろに付く。

マラッティーアは悠々と、サエッタは背後から感じる不気味さから逃げる様に、建物を後にした。

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