見えない心~3~(Side;マリウス)
今さらですが、創作しきれてないものと創作が混在していて、情けない事になっとります。
後で余裕が出たら、修正するかもしれませんが、今はこの勢いのまま、突っ走らせて頂きます(笑)
ご容赦下さいませ。
「陛下、フェリクス王子は本当にご無事です。
それどころか大変なお喜びで、今日はお昼に母上のプディングを食べたいと、はっきりお話しになられたそうです。
今頃、料理長が妃殿下のレシピでプディングを作っているころでしょう。」
怒りに燃える目は逸らさぬままだが、アウトゥールの両手がゆっくりと下がる。
時折震える声で、書記官は必死に言葉をつなぐ。
「眠っておられる王子の手を、妃殿下がそっと握ると、目を開けてそれは嬉しそうにお笑いになられて
『母上と、サントヴァの港に行った夢を見ました』
と、おっしゃいました。
妃殿下が不思議な歌を歌うと、穏やかなお顔でまたお眠りになられ、目覚めた時にはずいぶんと体調は快復されていたよしにございます。」
【歌】という単語に反応して、振り向いたアウトゥールの迫力に、より一層声を震わせたものの何とか、最後まで言いきった。
「何の歌だ。まじないのようなものではないのか?」
「わたくしには、わからない言葉でした。ですが…」
愛し子よ 夜空に瞬く星が
あなたの道をいつも照らしてくれますように
愛し子よ やさしい風が
あなたにいつも幸せを運んでくれますように
愛し子よ アラセナの木陰が
あなたに心地よい休み場をくれますように
「古いアリオスト語の、子守唄だ。
最後に
ー愛し子よ 汝の上に全能なる神の御加護のあらんことを
と、言って額と両手に3度ずつ口付けをしていた。
アリオストの習慣で、旅立つ我が子の健康と安全を願う母親のおまじないだ。」
さすがに歌う事は出来ないが、繰り返し出てきたフレーズは、なんとか訳せた。
我ながら、はるか昔に少しかじった古代アリオスト語の複雑な文法を、よく思い出せたものだ。
しばらくして、アウトゥールの背中から怒りの気配が薄らぐ。
「アレの要求は、本当にそれだけか?」
「はい。監視つきでよいから、30分だけフェリクスに会わせてくれ、と。
それで、全てでございます。」
恐らく、彼にとっては永遠にも思われただろう長い沈黙の後、筆頭書記官は退出と、2日間の特別休暇を許された。
2日では、この【水晶の間】での精神的疲労を癒すには、足りないだろう。
覚悟していたとはいえ、殴られなくて済んだのは彼の必死さのおかげだ。
何か、労いの品を届けてやらねばなるまい。
ーマリウス。
アウトゥールと私は、声も似ている、と時々言われる。
だが、ふてぶてしさで右に出るものはいないと自他共に認める私でさえ、振り向かずにはいられないこの迫力が《王者の威厳》なのだろう。
「事の成り行きは、わかった。
お前の意見を聞きたい。」
正直に、わからない。未だ混乱しているのだ、と告げると。
年下の従兄弟殿は、かすかにではあるが驚きで目を見開いた。