表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の魔女妃  作者: 美遥
1/19

長い廊下

設定やツメの甘さには、自信がございます。

お心広く、軽いキモチで読んで頂けましたらありがたいです。

『わかりました。』


ー絞り出した声は、なんとか震えずにすんだ。


『出来うる限り、早急に塔に移ります。

マリウス殿、2時間後に優秀な書記官を3名連れてわたくしの部屋に来なさい。


 これは、命令です。』


震えはしなかったものの、自分でも驚くほどの低い声が、既にはりつめていた部屋の空気を瞬時に凍らせたのがわかった。


―いつも、微笑んでいなさい。春の爽やかな風のように。

決して嵐になってはなりません。

貴女は、王族なのですから。


優しい母上の声が、いつものように頭をよぎる。

その声を隅に押し込めて、私は微笑みを浮かべながら振り返る。


「色々と準備がありますので、わたくしはこれで失礼致しますわ。」


ー待て

という声を聞こえなかったことにして、もう一度大きく優雅に微笑む。

「ごきげんよう」


椅子から腰をあげ、もう一度口を開きそうな男の目をしっかり見て優雅に挨拶をする。


 さすがに、これ以上はもたない。

すぐに身を翻すと、我が優秀なる友は既に扉を開け、護衛の待機も完了させていた。


 ーありがとう。

声を出さず口を動かすと、唇の端だけで器用に笑い、護衛を促して歩き始める。

 いつもと同じように、私の少し斜め前を歩く彼女の背中を見ながら、ゆっくり歩き始める。

 いつもと同じように。



 先をゆく護衛の持つ灯りがゆらぎだす。

気付かれないように素早く拭ったが、彼女はちらりとこちらを見る。

 気遣わしげなその視線に、微笑みで答えて私は歩き続ける。


しっかりなさい!

貴女は、王族なの。いかなる時も堂々としていなさい。

どんなに惨めで、大声で泣きたい時でも。

前を向いて、背を伸ばして!


そう自分に言い聞かせながら、廊下を進む。

 涙を堪えながら歩く道のりは、いつもよりずっと長かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ