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9話:知りたがり

テスト終わりましたヾ(●゜ⅴ゜)ノ

更新率も上昇すると思うので、問題はないと思います。

昼休みを知らせるチャイムが鳴り、午前の授業は終わりを告げた。

今日もというかなんというか、ギリギリ分かる範囲内で授業についていっていたのだが、やはり凡人の俺では理解力に欠けるということが分かった。

いや、いつもそう思うのだが、改めて実感したというところが大きいだろう。

「ふあー、やっぱり数学は難しいよね。 朝浦君は今日のところ分かった?」

前の席の歌音が振り返ってそう訊いてくる。

「いや、正直ギリギリってところかな。 これはテストが酷いことになりそうだ……」

「え~、今からそんなこと言わないでよぅ。 私も不安になっちゃうよ」

歌音も相当苦戦しているようだった。

その点、ミユは授業中に当てられた問題をスラスラ解いていて、教師すらも少し驚かせていた。

流石は天使。 やはり天使と言うものは頭が良いものなのだろうか、それともミユが特別なのか。

そう言えば、ミユやスイの同属の話を聞いたことが無い。

俺が知っているのはあのやたら適当な神様だけだし。それから推測するに、ろくな奴がいないような気がしてならないのだが、そこはどうしようもない。

そんなことを考えていると、またもや俺のクラスに来客があった。

今朝も訪れた、隣のクラスの学級委員長だ。 つまり芹川結穂と言うことになるのだが。

「朝浦陽助!」

「はいっ! なんでしょう!?」

今朝の状態が全く嘘だったかのような気迫で、俺の元へと近づいてくる。

何やら覚悟を決めたような顔をしている。ほんの少し、頬が赤いのはどうしたのだろうか。気合の入れ過ぎで頬を叩きすぎたとか?

「こ、この間のお礼、を、受け取ってくれっ!」

どんっ、と俺の机の上に置かれたのは何やら箱型の物体。

「何だこれ、爆発物?」

「んなわなけないでしょ! お礼だって言ってるの!」

「お~? 結穂ちゃん。ついに決心したのかな?」

歌音がいつの間にやら芹川の隣に立っており、肘で芹川のことを突いている。

俺はその箱型の物体の、上蓋をとってみた。

するとそこには。

「お、おお……」

程よく詰められた白米が箱の半分を制圧し、その中央には赤い梅干しが乗っている。もう半分の領地には、タコさんウィンナー、唐揚げやプチトマトと言った定番の兵隊がそこに鎮座していた。

要するにこれは。

「弁当?」

「そ、そうよ。昨日のお礼にお弁当を作ってきたの、お礼によ!」

「なんで二回も言うんだよ……。 でもこれ、本当にもらっていいのか?」

「お礼だって言ってるでしょ」

「そ、そうか。じゃあありがたくもらうよ。今日の昼はパンの予定だったからな。助かったよ」

「………」

「………」

ニヤニヤしている歌音はいいとして、何故芹川はまだここに居るのだろう?

別に俺の食べるところを見ていたって面白いことなんか一つもないはずだけどな。

「本当に鈍感野郎ですね、あなたは。 早く死んだ方がよいのでは?」

「ちょっと待てお前。何故に俺はそんな暴言を吐かれなければならないんだ……」

いつの間にか俺の席の近くにやってきていたミユがそんなことを言い出した。

スイは絶賛睡眠中である。

とりあえず、腹も減っているし頂いた弁当を食べよう。まずはおかずから一口。

「……うまいな」

「べ、別に普通でしょ!」

そこで俺はようやくミユの言っていたことが分かった。

そういうことか。

「ありがとな、芹川。 すごく美味しいよ」

「っ~~~~~!」

感謝の意を伝えると、彼女は何故かすごい勢いで走り去っていってしまった。

飯を、取りに言ったのだろうか?

そこで歌音が。

「ふっふーん。大成功だね! あ、そうだ、朝浦君。その弁当箱は私が返しておくから、食べ終わったら私に渡してね?」

「え、なんでだ? 芹川と一緒に飯食わないのか?」

「ん? 何言ってんの朝浦君。 もしかしてマジボケ?」

「何が?」

「え………?」

そのとき何故だか歌音はムンクの叫びのような顔に変化した。

「おあっ、お前! 何なんだその顔は!」

「あーさーうーらーくーんーはー、 マジでした。がっくし」

「意味が分からんわ!」


そんな中、ミユはまたもや俺のことを蔑んだ目で見ていた。




午後の授業はあっという間に終わってしまい、教室はすでに放課後モードで部活に行く者や残っておしゃべりを始める者などで溢れかえっていた。

俺はと言えば、どちらでもなくいつものように残ってはいるが自分の席に座ったままでいるという放心タイムになっていた。

理由は前に説明したとおり。しかし、今日はアイツらに聞きたいことがあった。

天使と悪魔が俺の家に住み着いてからかれこれ2週間は経った。それなりにクラスに馴染み、歌音とは特に仲良くなっている。それは良いことだ、風呂掃除の手順も覚えたし朝浦家ルール(陽助発布)も徐々に適用されて言っている。

だが、肝心のここに来た理由が明確になっていない。

というか、修行のために来たとか言ってたよな? アイツら何か修行してるのか?

人間と触れ合うことが目的だとか言っていたけど、本当にそんなもんでいいのか?

なんというか、詳しいことをもっと教えてほしい気がする。終わりはあるのか、とかな。

共同生活が始まって俺も疲れているのかもしれない。なんだか早く解放されたいような気分だったのだ。

そんなことを考えていても仕方がないのだ、なんだかんだで付き合っていくしかないような気がした。だって神様直々に頼まれたからな、あの超適当な神様にな……。

「やべ、なんか頭痛くなってきた………」

あの天界(?)での出来事を思い出すと頭が痛くなってくる。 神がアレでいいのか……。

そういえば、ミユやスイは人間界のことをちょいちょい質問してくるが、俺はアイツらの世界のこととか知らないんだが。

特に知っていてプラスになることはないだろうが、マイナスにはならないだろう。

というか、俺自身が少し興味がある。

ふと、窓の外を見るとグラウンドで陸上部が活動していた。

歌音はどうしているだろうか。

その姿を探して目を走らせていると………いた、ハードルを運んでいる。

楽しそうに部活仲間と話をして笑っていた。

それはなんだか平和で、日常を思わせるのに十分な見本だった。

「がんばってるなぁ………」

気が付くと、教室には誰もいなくなっていた。

夕暮れの光が差す放課後の教室、なんだか神秘的な空間に紛れ込んだようだった。

鞄を持って立ち上がると、教室の出口に一人の女生徒が立っていた。始めて見る顔だったので、同じクラスの人ではないと簡単に分かった。少しウエーブがかかった髪をしているその女生徒とがっつりと目が合い、気まずい雰囲気が漂う。

「え、と………」

俺が口ごもっていると、彼女はその強気な目の中に柔らかい光を灯してふっと笑い、踵を返してそのまま行ってしまった。

同学年のはずが、なんだか大人的な雰囲気をまとった女の子だった。

もちろん名前は知らないし、会ったこともないはずだった。だけれども何かが引っかかった。

上手く歯車の合わない感覚。そんなものが俺の心の中にはあった。




家に帰ると、居間では珍しくスイが勉強していた。隣ではミユが同じように勉強していたがその差は歴然だった。何よりも姿勢が違った。ミユはいつも通りシャキッと背を伸ばしてイスに座り勉強しているのに対して、スイは机に肘を着きながらあれこれと唸り、頭から煙を立ち昇らせていた。

なんだか出来る子と出来ない子の例がそこに並べられているようで見ているこちらが鬱な気分になりそうだった。

たまにスイはミユの方に視線を走らせているが、ミユはその視線に対応することなく手を動かしている。

「なんだお前ら、勉強してたのか」

「おかえりなさいませ、低知能さん。 テスト前の勉強ですよ」

「お、おかえりぃ……私はもう死にそうだよぉ……ぐすん」

いつも通りの毒舌というか蔑みに加えて今日はスイが性格を取り繕おうともせず項垂れていた。

今朝、歌音との会話にも出てきたが、もうすぐテストなのだ。

テストの度に学年の番数が発表されるのだが、凡人である俺はいつも中間辺りをうろうろしている。

歌音は前に話した通りに賢い。それなりに順位の方は高いのだろう。

いつら天使と悪魔は……まあ、なんか見た感じで分かる。

ミユはおそらく上位層、普段の授業と家に帰ってからの勉強の度合いでこんな俺でも大体予想はつく。

対してスイは、まぁ……下位層だろう。

悲しいがこれが現実と言うものである。

「あ、そうだった。お前たちに聞きたいことがあったんだよな。主にお前たちのことについてんだけど」

鞄を自分の部屋に放り、ソファーに腰をかけながらそう言うと案の定予想していた応答が返ってきた。

「プライバシー侵害ですね」

「その答え方は予想済みだったんだが……。そういうことじゃないんだよ!」

「天使のこととか悪魔について聞きたいのですね」

「分かってたんなら面倒な言い回しするなよ……」

「か……陽助様……いいえ、下等生物様が予想していたことを私は予想していたということがここで分かりますね。流石は単細胞です、流れが読みやすい」

「え、え、なんでこの会話の中だけで俺がこんなに蔑まれているわけ!? あとミユ、お前なんか怒ってないか?」

「いえ、いつも通りかと」

いやね、いつも通りなんだけどもさ、なんか違うっていうか……。

もうこれがいつもどおりって言える俺はもうヤバいと思う。

「アタシたちの世界の話? ふっふーん。教えてあげようか?」

スイがこちらを向いて反応する。先ほどの勉強に弱った様子とは打って変わってなんだか得意気である。

さて、スイに国語力があったかどうかが問題なんだけどな。

「して、なんでそんなことを急に言いだしたのですか?」

「そりゃあ、俺はお前らのことあんまり知らないしさ、一応これからも一緒に居るわけで、少しでも知れたらそれでまた何かが分かるようになるっていうか………いや、とりあえずは俺の興味かな」

「恰好をつけようとしたけれども最終的に投げたパターンですね」

「うっさいわ、ほっとけ!」

「教えてほしいのですか?」

「ああ」

「だが断る。………と言いたいところですがいいでしょう。ジジイ……いえ、神様より聞かれたらなるべく応えるようにと言われておりますので」

「神にも容赦ないお前すげぇわ」

「どういたしまして」

ほめているわけでは無いんだけどな。

調子を狂わせられっぱなしの俺に対して、ミユは淡々と語りだした。



世界のことと、自分について。













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