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7話:日常での籠城

テスト期間入りました;

更新速度がかなり低下するうえに内容が薄くなっております。

どうかご了承のほどをお願いしますm(_ _)m

走って走って、さらに走って走って。自分の体力の限界に嫌気がさしながらも走ってたどり着いたのは駅前だった。

ただ闇雲に走ったわけではなかった。人通りの多い場所に移動したかっただけなのだ。ここならば交番も近くにあるし、人も多いし、なんとかなると思ったからだ。

それにしても疲れた。

あの赤髪から逃げるのにどれだけ走っただろうか。うちのマンションは駅から1km付近にある。先ほどのコンビニはうちのマンションより駅寄りなので………あんまり走っていないかもしれない。

まぁ、そんなことよりも今は逃げ切れたことに喜ぼう。

「ちょっ………あなた、朝浦っ………なんのつもり!?」

「なんのつもりって……助けてっていったじゃん」

息を切らせながらも会話を続ける。

何故だか芹川は目を潤ませながらも眉を吊り上げている。

「べ、別にっ………」

「つーか、なんだよあれ。わざわざ絡みに行く必要あったのか? いくら学級委員長だからってそんな………」

「嫌なの」

すっ、といつもの掴みかかってきそうな勢いは消え、目は光を失っていた。

その目は・・・・知っている・・・・・


最悪なもの、苦しくても忘れられないもの、自分の中の枷、そんなものを抱えている目だ。


「ああいうの、嫌なの。誰のためにもならないようなことを平気でやって、迷惑掛けて、誰からも煙たがられて、………性根の腐ったような奴ら。死んだっていいような奴らがいることが、そこに存在していることが嫌なの」

「そんなこと……言ったら、駄目だろ」

「……でもね、嫌なの。 気持ちが悪いの。 朝浦陽助もそんな奴だと思ってた」

「へ?」

俺? 何故にいきなり俺? 今シリアス展開じゃなかったのか。

って、ああ、アレか。噂のせいでか、そんな根も葉もない噂のせいで初対面で殺されかけたのかっ!

「でも、少しは違った。 今でも何か考えてるんじゃないかって気持ちが悪い。 ……ううん、言い過ぎってのは分かるんだけど……でも違ったの。少し、ね」

「意味が分かんないんだけど……どういう?」

「なんでもない。私、こっちだから」

そういうとポニーテールを翻して彼女は背を向けて行ってしまった。

何故だか、学校に居る時よりも幾分かその背中は小さく見えた。

俺の、幻覚だろうか。 考え過ぎだろうか。

それでも、見えたんだ。



「あ、バス・○ジッ○リン………買い忘れた」




家に帰ったころにはすでに10時を回っており、怒りのオーラを無言で発するミユとソファーで転寝するスイに出迎えられた。

「い、いや………これにはわけがあってな? 」

「早くお風呂を洗ってください。ついでにあなたは人間から足を洗って下さい」

「俺に死ねと!? 確かに遅くなったのは謝るけどさ!」

俺が洗剤の有無に気付いて買いに行こうとしたのが9時だった。つまり、一時間経過しているということだ。そりゃあ一時間も待たされたら腹が立つだろうが……仕方ないじゃん。

「まぁ、いいでしょう。私は早く寝たいのでお風呂を早く沸かして下さい。二回言いました、この意味が虫けら陽助様に理解できるでしょうか」

「わ、分かった。すぐにでも……」

あまりにもオーラが絶大すぎて、毒に対しての突っ込みすら忘れていた。

それにしても、あっさりと許してくれたな……。それはそれでラッキーだが。


だがそれは、今日の話である。


「起きてください、おつかいレベル0さん。 早く起きないと私の光速の拳があなたの鳩尾にッシュ!」

肺から空気が絞り出された。

「っぐはぅ!? ………な、殴ってから言うなぁぁぁっ!」

ヤバい、言ってから拳を放つまでのタイムラグの無さがヤバい。

こいつはキレてるね、昨日は許してくれたんじゃなくて保留にしてくれたってところかっ!

「わ、分かった。 起きるけども、……もとはと言えばお前が洗剤のことをややこしく言うから────」

「そうですか、では。 ……あぁ、スイも起こしてきてくださいね。 私はリビングで微動だにせず待ってますから」


シカト、いくない。

いじめ、いくない。


「な、なんてことだ……居候のくせにっ!」

俺は多分怒ってもいいと思うんだが。

「はぁ、……性格なんだろうな」

どうしてか怒る気になれない。 なんと言うか、なんだろうか………。

「あんまり人と接することがないからかなぁ……」

独り言をつぶやいてみる。 多分、そう思うのならそうなのだろう。

ベットから起き上がり、ハンガーにかけてある制服を手に取る。 とりあえずズボンとワイシャツだけを着て部屋を出ようとする。

あ………れ……?

部屋のドア、少し隙間が開いて……?

目が合った。 隙間の向こうから覗く目と。

「独り言……。流石一人ぼっちですね」

目がそう言った。 っておい!

「お前はリビングで微動だにせず待ってるって言ってただろうが!? なんで人の部屋覗いてんだよ!」

「いえ、朝ですので」

「いや、全く意味が分からんのだが」

「まぁそういうことにしておきましょうか。 長いこと出てこなかったものですから色々と気になりまして」

これ以上の詮索はやめよう。……というか俺はなんで後手に回ってんの? くっ、こいつ。

ミユと正面に向き合う。

よく見ればこいつ、可愛いんだけどなぁ……。 前にも言ったけど毒がね。

「な、なんですかー。 そんなに見つめられたら照れてしまいますぅー」

「棒読みで言われても反応に困るわけだ」

「そうですか」

「そうです」

「では」

「おう」

そのままミユは食卓に付き、俺は隣の部屋へ。

部屋のドアの前に立ったところで、思い出す。

スイは確か寝起きは暴走していて何度変態扱いされたことか。 というか、俺が起こしにに行くから問題になるのであって、ミユが行けば万事解決じゃね? とは思うのだが、ミユは……。

食卓の椅子に腰をかけて微動だにせず待っている。

これは、駄目だ。

そもそも、俺のことは起こすくせに何故にスイは起こさないんだ。 同じ部屋で寝てんだから自分が起きたついでに起こせばいいものを……。

文句ばかり垂れ流していても仕方がないので、一応ノックをしてからドアを開ける。

案の定、幾重にも積み重ねられた布団の中で虚勢張り悪魔は眠っていた。というか眠っているのだろう。

分からない。ここからじゃあ見つけられない。

この山から探し出さなければならない。これが面倒でおそらくミユは起こさないのだろう。

っていうか、なんでこんな布団を……。引っ越し当初はこんなことがなかったのに。

「おい、スイ! お前は布団の中で籠城でもしてんのか、はよ起きろ!」

一枚ずつ引き剥がしながら声をかけるが、見つからない。

布団を引き剥がしているうちに、何か見知ったような感覚がした。何か、食べ物に似てないか……これ?

「きゃべつ……?」

城からキャベツ城へとレベルダウンした。

きゃべつがモチーフなら、馬鹿悪魔は中心にいるのだろう。

均等に布団をはがすことを止め、一気に中心部まで捲る。

中心には小さなスペースがあって、そこに丸くなるようにしてスイは眠っていた。

「窒息死するだろこれ……ってうぇぇぇぇっ!?」

この間俺は注意した。 寝るときは下着だけではなくパジャマを着用せよと。

多分寝る前には着ていたのだろう。だが、それはスイの寝相の前には無意味なのか!?


何故にパジャマのズボンがずり落ちている!?


そしてまたも計ったようなタイミングでスイは目を覚ます。

「ひっ……。また朝這い!? しかも下から脱がすという上級者!?」

シュバババ、と表情を変えながらも最終的に行きついたのはやはり涙目だった。

「何が上級者!? つうか、このパターンはもういいよ!」

カシャ、と背後で音が鳴る。

恐る恐る振り向くと、そこには。

「少女を襲う目つきの悪い男子学生……」

微動だにしないと公言していた彼女がいた。

「何撮ってんだてめぇ! それはシャレにならないから消せ、いや消して下さい!」

「これで私は絶対的支配者確定ですね」

「不吉な言葉っ!? 俺を社会的に抹殺するつもりかっ!?」

「…………」

「なんで何も言わない!?」



また、にぎやかな朝を迎えることとなった。










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