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38話:予備動作

祝日だと調子に乗っていたら呼び出しを喰らってバイトに行く羽目になってしまいました。

こんな時間に申し訳ありません。ただ、まだ20日ですと言い訳をします;

5日に一回更新は崩れておりませんm(_ _)m


あと、お気に入り登録して下さった方、ありがとうございます。

少しずつですが増えてきて作者も喜んでいます。

「なるほど、な。じゃあ今回芹川に悪魔が憑いたのはやっぱり芹川の心の衰弱のせいだったのか」

芹川から最近の事を聞いて一気に納得がいった。

芹川が苦手としている兄が帰ってきて、それで精神的に不安定だったのだ。そこに悪魔が付け込んで、今回の騒動が起きたということだったのだ。

「あ、あのね。そんな事よりミユちゃんとスイちゃん……。えっと」

見れば、ミユとスイは翼を展開したままだった。

「うおぉい! 何してんだお前ら、見えてるし!」

「そうですね」

「そうですねじゃないだろ! 隠さなくていいのかよ!」

「……どの道芹川さんを救った時点でバレていますから」

淡々と答えるミユに対して俺はどう言っていいのか分からなかった。

そもそも、俺がミユやスイが天使と悪魔だということを隠している必要はあったのだろうか。

いや、ただ単に言いだすタイミングや必要性が無かっただけのことか。

「歌音さん、芹川さん。私は天使です、天界から修行しに人間界にやってきました」

そんなことまでさらっと言ってしまうミユ。スイはミユとは違って小さくなって俺の後ろに何故か隠れている。

「……なんか、そうじゃないかって思ってた」

歌音は突然そんな事を言い出した。

「み、美里?」

「だってね、なんかミユちゃんは出会ったときから輝いてる感じがしたんだもん。 それにおとぎ話に出来るような天使さん見たいに綺麗だったし」

理由にしては勘の要素が多すぎる歌音の言葉に、俺はもうリアクションすら放棄していた。

「で、スイちゃんは……悪魔、なんだよね」

歌音のその言葉に芹川が目を細め、スイは俺の服の裾をぎゅっと握りしめた。

スイが隠れている理由が分かった。俺も最初感じたことと同じだ、悪魔というものに良いイメージが無いからだ。ましてやあんなことがあったすぐ後だ、これは仕方のないことだった。

見れば、スイは涙目になっていた。

折角できた友達が離れていってしまうのではないかと、そんな事を考えているはずだ。

だから俺は何かフォローをしようと、口を開けて。

「カッコよかったよ!」

歌音がそう言った。

「ふぇ?」

スイが声を漏らした。

「結穂ちゃんに憑いてた影みたいなのを切るときね、すごく格好良かった! 漫画やアニメ見たいに、ズバーって! スイちゃんは良い悪魔なんだよね!」

「う、うぇぇぇっ。美里ちゃん! 」

俺の後ろから離れ、ヒシッと歌音に抱きつくスイ。

歌音よ。心が寛大過ぎはしないかね。

まぁそれはそれで助かるんだけどな。

俺がそう思ってスイが飛び降りたジャングルジムを眺めていると、視線を感じた。

振り返ってみると、芹川がチラチラと俺を窺っていた。

「どうした、芹川」

「え、えっと。ありがとう……と、ごめんなさい」

「お礼は俺じゃなくてミユとスイに、だろ?それに謝る必要なんてない」

「でも、ごめんなさい! べ、別に私は……朝浦陽助の事が嫌いな、わけではない、からな」

「そうか、それは良かったよ。 本当に嫌われてたらどうしようかと思ってた」

「だっ、だからって好きという意味ではないからな! 」

そう言うと背を向けてミユのところへ歩いて行く。お礼を言いに行くのだろう。

俺は再びジャングルジムを見て、考える。

いつか、ここに来たことがある。それは両親に言われただけで、実際俺の記憶の中には欠片も残ってはいないのだが、何故か懐かしさを感じさせる。

ここに来たことがあると言われたからそう思うだけなのか、それにしても全く記憶していないとは何歳ごろの話だったのだろうか。

そんな事を考えていると、向こうから騒ぐ声が聞こえた。

「ミユちゃんすごい! 羽ってこんなに柔らかいんだ!」

「へぇ、悪魔の羽ってのもしっかりとしてる。ワニ皮とか蛇皮とかそんな感じだね」

「ワニ!? 蛇!?」

女子四人がきゃっきゃと騒いでいた。

というか、天使や悪魔が存在していることに対してこんなにも理解が速いのには驚きだった。

いや、でもそう思っている俺自身も最初に会った時そんなに驚いていなかった気がする。

「へっくち!」

スイがいきなり意味不明な擬音を発した。

「くしゃみか、最早前までのキャラが微塵も残っていないな。というか立て直す気もないだろ」

「う、うるさい! 日が沈んで、少し寒くなってきたからしかたないでしょ!」

辺りを見渡せば、もう真っ暗だった。木に囲まれているこの公園はなおさらだった。

「とりあえず今日は解散で、いいよな?」

俺の言葉に反対する者はいなかった。

夏休み中だというのに妙に暗くなるのが早く、寒気さえした囲い木公園をみんなで後にしたのだった。





家について一休憩した後、俺は今回の件について訊ねてみることにした。

悪魔が人間に及ぼす害について、だ。

「なぁミユ。こういうことってよくあるのか?」

「こういうこと、とは?」

ミユは首をかしげて見せる。明確な事件の区切りが知りたいのであろう、それを理解した俺は一から順に追って組み立てたモノを言葉にして告げる。

「ええと、今回のように誰かが非日常に巻き込まれてそしてそれを助けるってこと」

「それは、ほとんどありませんね」

「え? そうなのか?」

やたらとスイが『憑依』について詳しかったものだからこういう事例はいくつも存在しているのかと思ったが、実はそうでもないらしい。ということは、芹川の場合はレアなケースだったのだろうか。

「陽助様、何か勘違いをしているようですから言いますが」

ミユは俺のことをまるで出来の悪い生徒を見る教師のような眼差しで眺めてから言葉を切りだした。

「非日常に巻き込まれて、それを助ける・・・ということはほとんどないのです」

「……つまり」

「そうです。誰かが非日常に巻き込まれることはよくあります。しかし、その人たちを救うとい・・・・・・・・・・う事例はほとんど無い・・・・・・・・・・ということです。今回、芹川さんが助かったのは心配性な誰かさんの嫌なほど冴えわたる勘のおかげだったということです」

ということは、つまり。

俺が今朝にただの予感だと思っていたアレが、芹川のちょっとした運命を左右したということなのか。

であれば、俺がもしただの勘だと気にしていなかったら。

もし、そうだったとしたらなんて考えたくもなかった。冷汗が背中を伝わるのが分かった。

「そういう点ではたまには役に立つのではないでしょうか。普段は使うことのない輪ゴムやクリップのように」

「謝れっ。輪ゴムさんとクリップ先輩に謝れ! お前は今酷い例えをした!」

俺の突っ込みもそこそこに、ミユは改めて違う話題を振ってきた。

俺があまり考えまいとしていたものについてだ。

「そう言えば、夏休みは今日を合わせてあと7日ですね。課題の方は大丈夫なのでしょうか、そんなことより陽助様、夕食の時間が迫っていますよ?」

「会話の割り込ませ方と巧妙な流れの追撃!? 一度に大切なことをまとめて言うな! わけが分からんくなる」

「そうですか、では。夕食の時間が迫っていますよ?」

「あぁ、そこ抜粋しちゃう? 俺課題終わってないんですけど」

「そんな事は関係ありません。夕食を作るのは陽助様のルーチンワークなのですからつべこべ言わずに用意を始めて下さい」

早口で捲くし立てるミユに対して助けを仰ごうとスイを探すが、彼女の姿はリビングのどこにも無かった。

先ほどの会話のこともあってか、俺は少し考えながらもミユに聞いた。

「おい、スイは……どこ行ったんだ?」

「……そんな事が知りたいのですか?」

「何か知っているのか。何があった」

「陽助様には関係の無いことです。そんな事は気にせずに夕食の用意を」

「気にするなって何だよ!」

気付けば俺は叫んでいた。リビングはしん、と静まり返って耳鳴りさえする。

「悪い。でもさ、俺だって別に役に立たないことぐらいは分かってる。それでも何も話してくれないなんて寂しいじゃないか。それとも俺を信じてくれていないのか?」

「そういうことは言っていません。しかし、そんなに手伝いたい・・・・・のですか?」

いきなりのミユの申し出にうれしく思う反面、不安が大きくなってきた。

天使と悪魔というある意味人智を超えた存在が起こす出来事に対して、俺が何が出来るのだろうか。

しかし、ここで弱腰になっていてはいけない。俺には俺の出来ることがあるはずなのだ。

それに、何度この言葉を思い起こしたかは分からないが、俺は神から任されたのだ。

任されたものを途中で投げ出すことなんて俺には出来ないと思う。少なくとも今は。

だからこそ、俺はミユ達の力になりたいのだ。

「……手伝いたい」

「そうですか。……話しは聞いていましたか? スイ」

玄関へと続く扉に向かって話しかけるミユ。その瞬間扉が開いて、いつもの何も考えていないようなスイの姿が現れる。

「ん? どうしたの、ミユちゃん」

「陽助様が、スイの世話を手伝いた・・・・・・・・・・そうですよ」

「それってつまりどういうこと?」

「それは分かるでしょう。ついさっきもスイが何をしているのか私に聞いてきたのですから。そういう世話を陽助様は引き受けたいのでしょう」

会話の雲行きが怪しくなっているのを俺は感じていた。

しかし、何故か今口を挟むととても面倒なことになりそうな予感がした。

「えっ。ええええええっ!? そ、そんなっ、私、ペットじゃないし! トイレくらい自分で出来るよ陽助さんっ!」

俺が口をはさまなくてもスイは意味不明なことを口走っていた。

つまりは、ミユが意味深な会話を振ってきたときはスイはトイレにいたわけで。

手伝いたいという俺の言葉は文字通り危険な解釈をされているはずで。

「おおおおお風呂だってちゃんと一人で入れるしっ! な、なめんじゃねーぞおらぁ!」

スイは顔を真っ赤にしながら俺のことを睨んで声を荒げている。

何故か俺には怒りよりも照れが先行しているように見えた。

……見えただけだ。

「着替えだってもう完璧だし、夜だってたまには一人で寝ることができるしっ」

「たまにしかできないのか」

「ひぃうぅっ! 『眠れない夜は俺のベットで寝ないか』って遠まわしに誘ってますぅっ! 怖いよぉ」

「違うわ! もしそうだとしたら周りくどすぎて道ぐちゃぐちゃになってるだろ!」

「20点」

「お前は何に点数付けてんだぁぁぁぁ!」





現在時刻19:00。夏休み終了まで後149時間であった。















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