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15話:空と太陽、温度は低下

ケータイより投稿です~!Σ( ̄□ ̄;)

『名前、名前はなんていうの?』

少年は訊いた。どこか寂しそうにブランコを漕いでいる短髪の子に向かって。

短髪の子はサンダルを足に引っかけながらぶらぶらと揺らしていた。どこか不満そうな少年を見るその目つきは子供ながらに可愛くはなかった。

公園には二人の子供以外には誰もいなかった。

『ソラ。僕の名前はソラ。』

『そら? ソラっていうんだ。じゃあ、ソラはどこから来たの?』

続けて少年は訊いた。ソラはうーんと唸ってから上を指差した。

穏やかな日差しが差す春のことだった。太陽は優しく二人に微笑んでいるかのようだった。

『空、かな?』

『えっ。ソラは空から来たの? なんか面白いね!』

『面白いの? じゃあ、タイヨウ君はどこから来たの?』

『おうちから……だよ? あっちに僕のおうちがあるんだ。それより、僕の名前はタイヨウ君じゃないよ!』

『タイヨウ君なら、僕と仲良くなれそうだよ。だから、タイヨウ君』

『どうしてタイヨウだと仲良くなれるの?』

ソラはブランコから飛び降り、空を見上げた。真っ白な雲がふわふわと行き場もなく漂っている。

『だって、タイヨウとソラっていつも一緒に居るよ? しかもすっごく近くに! 絶対仲良しだよ』

『だから僕たちも?』

『そう! ね、遊ぼうよ。一緒に』

『そうだねソラ! 僕たちは仲良くなれるよ、だってもう友達だもん!』

『あはははっ』

そう笑うソラの笑顔は輝いていた。それはタイヨウにも勝るくらいの輝かしさで。

ただ、天気の良い日なんてものは永遠ではない。

雨が降る日もあれば、雪の降る日だってある。台風だってくることもある。

二人は、一緒に居られなかった。

見上げる分には空と太陽は近い。同じ場所にある。でも。

本当は空なんてものは存在なんてしてなくて、太陽は地球の外にある恒星で。

二人の距離はあまりに遠く、遠く。


夜になれば、二人ともいなくなってしまうのに。





星が落下した。

いや、正直に言おう。星が舞った。

頭を何にぶつけたのかとか、またミユの仕業だとかそんなことではなかった。

ベットから落ちて床に頭を打ちつけていた。

「いっつ………。おいおい、ガキじゃないんだから……」

頭を振りながら立ちあがる。床は冷たくて気持ちがよかったが、今は涼んでいる気分ではなかった。

何か変な夢を見た気がする。二人の少年の夢? 内容がよく思い出せない。まるで霧がかかったかのようにもやもやと見事に何も思い出せない。

感覚で言えば、喉まで出かかっているという奴だ。まぁ、喉止まりで出てくる様子は一向にないのだが。

携帯で時間を確認すると、6時だった。そう言えばミユとスイが来てから最初の方はこの時間帯に起こされたが、今は30分引き伸ばされて6時半にミユが攻撃という名の手段を用いて俺を起こしに来る。

ガチャ、と俺の部屋のドアが開かれる。隙間から覗いているのはミユだ。

「どうしたんだ、いつもより早いじゃないか」

「何か物音がしたので……。いえ、罠を張ろうかと思いまして」

「………。ただベットから落ちただけだよ。何もなかった」

「そうですか。では、私が起きてしまったので朝食の準備をお願いします。夢落ちさん」

「へいへい……」

珍しくパジャマ姿だったミユの後を追って、リビングに向かう。

ミユが部屋のカーテンを開き、俺は朝食の準備に取り掛かかる。おそらくスイは後1時間半ほど起きてこないだろう。

「そう言えばお前、パジャマのままだぞ」

「………変態ですね」

「意味が分からんぞ! 俺はただ、その、指摘しただけであってだな!」

「あまりじろじろ見ないでください。恥ずかしいです」

「だから、その棒読みを何とかしろよ………。可愛げもあったもんじゃないぞ」

「むっ、そうですか。では着替えてきます」

そういうとミユはリビングから出ていった。これもまた珍しく物聞きのよいミユだった。

それより何だろうか。今日はとても大切なことがあった気がする。

行事、行事だ。……そうか、テストか。

今日は1日午後までテストづくしだったはずだ。それでもって明日も1日使ってテストだ。

これは気が滅入る。朝から嫌なことを思い出してしまった。

しかし、俺は去年とは違って勉強会なるものをして情報交換を行ったし、ちょこっとだけ勉強もした。

歌音には勝てないだろうが、よいところまで行けるのではないかと思う。

ちなみにうちの学校、滝原高等学校はテストランキングなるものが張り出される。成績上位者30名の名前が並べられるのだ。二年生はD組まであって大体200名程度。俺はその中間からちょっと下をうろうろしていた。各個人には大体位置するであろう順位と成績がプリントで配布される。

一年生の時点で最高順位は98/200位。本当に微妙である。

「ゴミムシさん。パンが焦げていますよ」

いつの間にかそばに居たミユがオーブントースターの中を指差す。

そこには真っ黒とまではいかないが、こげ茶に染まった食パンが鎮座していた。

「うぁ……やっちまった。悪い、焼き直すから待っててくれ」

「いえ、私はそれで構いません。そのかわりちーずをのせておいてください」

「あ、ああ……」

罵詈雑言、が飛んでこなかった。いつもであれば『お前も焦げるか?』といったようなニュアンスを醸し出すユニークな暴言が飛んでくるはずなのだが。

「な、なぁ。どうしたんだお前」

「どうした、とは?」

「何かいつも違う気がして、なんだが」

「今日はテストですね」

「……そうだが?」

ミユは新聞を広げ、政治経済の欄を横眼で眺めつつ

「陽助様はどのような失態を繰り広げるのか、と楽しみで」

「お前……何を言っている?」

「知能の差、というものを見せつけるにはもってこいの行事ですので、朝から興奮してまして………。すいません陽助様」

「なにあやまってんの!? え、これ、俺はどう怒ればいいわけ!?」

それきりミユは朝食を催促するように俺をじっと見つめたまま何も言わなくなった。

ぐっ、と睨み返しているが、その大きな瞳に弾かれてしまう。なんだかこっちが恥ずかしくなってきた。

「何故に頬を赤らめているのですか気持ちが悪い」

「う、うるせっ」

決してミユに見惚れていたわけではない。そう、断じて違う。

セットしていない柔らかな髪に大きな瞳、柔らかそうな唇。素のミユは可愛いなぁとか思ったりはしない。そう、しない。

「今すごく強烈な悪寒が走りました。全身に鳥肌が立って気が狂いそうでした」

「…………」

本当にこいつは心が読めるんじゃないかと考えるときがある。





「おっはよー、朝浦君! テストだよ。辛いよね苦しいよね厳しいよねー!」

くるくるくると朝から元気な歌音は教室に入るなりそんな事を叫んだ。

もちろん後ろにはミユと寝ぼけたスイを連れて。

教室の他の連中は仲間同士で集まって最終確認をしたり、問題を出し合ったりしていた。

そんな中で俺たちは何故か雑談である。

「もー、ほんとにテストってヤだよね。 なんか、心臓がキューってなるよね」

「歌音は別にいつも高得点だろ」

「それはそうだけど、気分がよくないよね!」

否定はしないところが歌音らしいというかなんというか。

スイは数学の本を逆さに持って目を白黒させている。雑談などしている場合ではないくらいにヤバいらしい。

「おい、スイ。それ逆さ」

「し、知ってる。何か新たな記憶方法が無いか模索してるところなの!」

「スイ。キャラは?」

「今はちょっとタイム!」

タイムとかあるのか。便利だな、こいつのキャラづくり。

そんなこんなで朝の猶予は無くなり、ホームルームが終わってテストが始まった。


まぁ、俺も雑談してる場合じゃなかったな。




昼休み。

答え合わせを行う連中は放っておいて、俺たちはまたも雑談に興じていた。

朝とは違って芹川も加わって、さらにやかましく。

スイはなんというか、ある意味完全燃焼な感じだった。

「あ、朝浦陽助はどうだったんだ?」

あえて答え合わせはせずに、出来はどうだったかと聞き合うのがここの連中だ。

「俺? ……正直いつもどおりっちゃあいつも通りだが」

「いつも通りがたかが知れてますね」

「だぁまっとれ! んで、芹川は?」

「わ、私の(出来の)ことがきになるのか?」

「うん?」

「ふうん、まぁ上々かな。今度こそ1桁台に入ってやる」

芹川は頭がよかった。いつもは10何番台で2桁止まりだったらしい、なので目標は1桁台らしい。

ていうか、俺ならそこまで行けばもう充分なんだけどな。

やっぱり向上心的なものがある人は何かが違うのだろう。

「芹川はすげぇなー」

「そ、そうだろう。そうだろう!」

「わ、私は点数が1桁台かもしれないよぅ………」



ある一名の泣き声でここら一体の温度が低下した。











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