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白蒼月銀狼譚~二つ月の集った世界(種シリーズ②)  作者: 汐井サラサ
第一回キャラ人気投票一位獲得記念番外編:君と二人で……
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エミルサイド―1―

※メルマガで配信していた、君と二人で……のエミルサイドです※

 今日もカナイとアルファは、それぞれに出掛けていた。

 マシロも元気良く、今日の天気のように晴れやかに出て行ってしまったので、珍しく? 一人で過ごしていた。


 だから、マシロから「一緒に依頼をこなして欲しい」と、声を掛けてもらった時は嬉しかった。


 持ち帰っていた依頼書にざっと目を通す。

 依頼内容はそれほど難しいものではなさそうだ。直ぐに持ちかえれるようなものだ。ただ、王都から出る必要があるから、マシロは誰かを呼びに来たのだろう。


 きっと、僕ではない誰か、だ……。


 偶然、今日は僕しか居なかったから僕に白羽の矢が立った。

 後ろ向きにも取れるけど、きっと事実だ。マシロは僕に頼りたがらない。


 頼るなら、カナイあたりかな? どういうわけか、カナイには僕やアルファに対してはない気安さがある。正直なところ、ちょっと羨ましい。


 こ一時間ほどで到着した目的地で、馬から降り、手綱を木に括りつけながらぼんやりとしてしまっていた。振り返ればマシロが居ない。


 小さく溜息を吐いて、僕はマシロを探し始めた。

 木々の立ち並ぶところだから、隠れるところには困らないだろうけれど、見通しがそれほど悪いわけでもない。見つけるのはきっと簡単だ。


「エミルー! この辺りじゃない?」


 きょろきょろとしていれば、直ぐに声が掛かった。

 隠れていたわけではなく、いつものように先走ってしまっていたのだろう。にこにこと手を振っているマシロに悪意の欠片も見えない。


 それにしても、洞穴?


「あまり奥に行かないで」


 注意を促しながら歩みを速める。

 ばさりっと大きな羽音がして、反射的に振り仰ぐ。フクロウ? こんな時間帯にどうしてだろう? 


 不思議に思いつつも「早く!」というマシロの声に、返事して振り返る。


「―― ……マシロっ!」


 ***


 間に合って、良かった……。


「マシロ、怪我ない? 平気?」

「う、うん……平気……でも……エミルは?」

「僕? 僕も平気。少し汚れちゃったくらい、かな?」


 ぱんぱんっと肩を叩き、微笑む。それにしても、参ったなー……。そっと、耳に触れれば、いつも触れるものがない。さっき慌てて洞穴内に駆け込んだ際、落としてしまった。きっとこの瓦礫の下だと思う。

 恨めしく瓦礫の山をねめつけて一つ溜息。


 ……まあ、良いか。そのくらい。


 マシロ側に居られたことに胸を撫で下ろし、それ以外のことは大したことじゃない。時間さえ気にしなければ、直ぐになんとかなるだろう。

 んーっと目を凝らせば洞穴だと思っていた場所は洞窟だったようだ。奥に続いている。小高い部分の地盤が緩んで、落盤したようだったし、ここに留まるのは良策じゃない。


 静かだし、そっと岩肌に触れれば、濡れている。足元も水っぽい……。

 獣系の魔物はこういう場所は好まない。大型のものや危険に直結するものは居ないと考えても大丈夫だろう。


 そんなことを思案している間、マシロは不安げにどこか見ていた。

 ここには居ない、誰かに思いを馳せているのかもしれない。


 ちりっと胸の辺りが傷んだ。分かってる、理解していることなのに、現実って厳しい。

 その痛みに気がつかないフリをして、僕はマシロに手を伸ばす。

 マシロは迷うこともなく僕の手を取ってくれるのに……僕の位置は、もしかしたら友達以下かもしれない……そう思うと少しだけ切ない。


 その手を引いて、洞窟の奥へと歩みを進めれば、じわりじわりとマシロとの距離が近くなる。ヒカリゴケ程度の光源では心細いんだろうな、と思うと、とても可愛い。

 軽く躓いて、慌てて僕の腕を取った後は、そのまま、腕を支えに使ってくれる。体重を預けそうな距離にきて、マシロは少しだけ離れた。妙な気遣いだ。

 怖いくせに……。


「歩き難いから、良かったらもう少し近くに来て?」


 と声を掛ければ気遣わしげに残った距離をつめる。本当、可愛いったらない。


「……ありがとう」

「どういたしまして」


 マシロから掛かるお礼に応えはしたけれど気を遣ってしまったのが、バレたかな? そういうのは少し格好悪い。

 出られなければどうしよう。というのなら、分かるけれど、マシロは僕を巻き込んだと気に病んでしまう。

 僕が好きで着いてきているということはないがしろだ。

 マシロの優しいところでもあり、甘え下手なところでもある。

 僕は余程、頼りなく……と、実際頼りないかもしれない。アルファやカナイなら、こんな探検必要なかっただろう。

 僕だから、こんな道を歩かなくてはいけないんだ。


 マシロに責められることがあっても謝罪してもらうようなこと、絶対にない。


 なんとかマシロの気を紛らわせることが出来るように、話を繋いだけれど、成功したかどうかは分からない。分からないけど、少し、笑顔が戻ったみたいだから大丈夫、なのかな?


「終点、みたいだね。思ったより深くない」


 マシロが強い女の子で良かった。けど……


「気をつけて」


 好奇心の強い女の子でちょっと怖い。不用意に水面を覗き込むマシロの腕を掴んで、掴まえられたことにほっとした。


 マシロの居た世界って、本当に何の危険もないようなところだったんだろうな……。マシロの無用心さは筋金入りだ。

 簡単に注意だけ促したけど、理解は早いから十分だと思う。


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