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白蒼月銀狼譚~二つ月の集った世界(種シリーズ②)  作者: 汐井サラサ
リク番外編:愛猫と正しい休日の過ごし方
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前編

 私は猫を飼っている……もとい懐かれている。

 黒猫だ。

 毛艶も良くスタイルも良い。

 躾もそこそこは出来ていると思われる。思われるけど問題は……


 ―― ……朝…… ――


 その日私は夢を見た。


 ここに来て長くなるけど最近は見ることのなかった私の生まれた世界の夢だ。夢の中で私は笑っていたと思う。何を見て、もしくは何をやって笑っていたのかはっきりとは思い出せないけれど……もう、戻ることの無い世界は私に優しい気持ちだけを残してくれる。

 そんな中でまどろんでいると、頬に掛かる柔らかなものに擽られぼんやりと覚醒した。


「……耳」


 ―― ……さわさわ。


 視界に入った獣耳をとりあえず撫で付ける。黒い短毛で包まれた耳は滑々でとても気持ちよくて軟骨のくにくに感が堪らない。


「……猫が飼いたい」

「私を飼ってください」


 ぎゅぅっと大きな身体に抱き締められて、私は刹那息を詰めた。サイズだ。猫として明らかな問題はサイズだと思う!


「いい、いらない……ブラックだけは飼わない」

「酷っ! 酷いです」


ギブっ! ギブアップですっ! 益々両腕に力を込められて私はベッドをぼすぼすと叩いた。


「あ、すみません。つい愛が溢れて」

「……ああ、そう……」


 その溢れた愛に溺れそうだったとでも私がいえば満足なのだろうか?

 すっと私から両腕を離したブラックは、どことなく不満そうに眉を寄せる。私は、はぁと嘆息して「おはよう」と目の前にあったブラックの額に口付ける。


 正直照れ臭いし恥ずかしいから嫌なんだけど、それだけでブラックの眉間の皺は取れるから良しとしよう。そしておはようといっておきながら出てきた欠伸を噛み殺して私はもぞりと起き上がると、んーっと背伸びを一つ。


 本日も例外なく晴天だろう。


 私に優しい穏やかな季節だ。シャワーでも浴びようとルームシューズを履きながらブラックに今日の予定を尋ねる。基本的に年中無休だから私が休日で戻っていてもブラックは普段どおりだ。家には居るからそれなりに気は使ってくれてるんだと思うけど。


「マシロの予定に合わせます」


 いつものように答えになっていない答えを貰って私は唸りつつ遮光カーテンを開く。私の予想通り晴天だった。


「天気も良いし、温室の手入れでもして……書庫の本でも漁って……」


 ぶつぶつと口にした私の傍にいつの間にか来ていたブラックは「代わり映えしませんね」と苦笑する。


「好きなことを好きなようにしてるだけだから良いじゃない」

「それでも、私に気を遣ってでしょう? 出掛けても構わないんですよ? ここには人形でも置いておきますから」


 くるくると私の髪を指に巻きつけて遊びながらそう口にするブラックにそういうわけじゃないけど……と零して外を見る。

 平日午後は大抵外に居る。

 でも、確かに……ブラックと外出するといえば食事くらいのものだし……どこかへと思わなくも無いこともないこともない……うん。ない。一人確信して大丈夫だと口に仕掛けてブラックにストップを掛けられる。


「そうだ。今日は午後少し出掛けましょう。ティータイムくらいで構わないので、マシロのその予定を片付けてからで大丈夫です」


 にこにこと勝手に決定する。多分私に拒否権はない。


「どこに行くの?」

「少し散歩です。良いことを思い出したんです」


 マシロはきっと喜びますよと、にこにこされるとどうでも良くなる。私は分かったと了承してブラックと軽く口付けを交わすとそのままお風呂場へ向かった。付いてきそうなのを沈めた回数は数知れず。大分学習したのか今日は付いてこなかった。


 そのあとは予定通り、温室へ行き調剤用と観賞用の植物の世話をした。といっても大半はいつもブラックがやっているので、私のすることといったら葉の汚れをとってあげたり霧吹きで水を上げたり程度のことだ。図書館の温室管理当番に宛てられているときのほうが余ほど忙しい。


「それでブラックは何をしてるの?」

「マシロを見ています」

「それは見れば分かるけど仕事でもしてれば?」


 温室の一角に設けてあるテーブルセットに座って暇をしている風に見えるブラックに声を掛けるとブラックは悪びれる風もなく嫌ですと答える。これじゃ、あえて家にいる意味がないと思うのだけど。


「上は傀儡が適当に回しています。だから、出掛けても構わないといったじゃないですか」


 ふぅと嘆息して、そうだったと頷くと私も片付けを始める気になった。ふと手元の霧吹きを見て、ちらとブラックを見る。余りに可愛くないことを連呼するブラックに悪戯心が湧いた。

私はとことことブラックの傍に歩み寄ってにっこり。


「寝癖付いてるよ。直してあげる」

「え? そう、ですか?」


 ―― ……付いてないけどね?


 私は、そうそうと頷いて背後に回るとそっとブラックの髪に触れる。細くて柔らかくてちょっと羨ましい。少し撫でると頭上の猫耳が左右に垂れる。きっと気持ちが良いんだろう。これって意図的に動かしているのかな? 私に浮かんだ素朴疑問。小首を傾げつつ、和みつつ……手に握っていた霧吹きをしゅぱっしゅぱっと掛けてやった。


「ちょ、マシロ? 私は植木じゃないですよ?」

「―― ……」


 しゅぱっ。


 動きそうになるブラックの頭を押さえてもうひと噴き。


「ええっと……直りました?」

「―― ……」


 も、もう一回くらいなら許されるかな。調子に乗ってもうひと噴き。

 しゅぱ……っ。


「マシロー?」

「っ……ぷっ、くく、く……」


 駄目だ。我慢の限界。

 私は勢い良くブラックを背後から抱き締めた。だって、だって、だって……


「可愛いっ!!」


 叫ばずには居られない。

 しぱしぱ水掛けたら、み、耳がっ。ぴるぴるぴるって水を払ってる。ぴるぴるぴるって振るって……あぁぁぁぁ。もう私の負け。可愛いよー。タダの猫なら良いのにっ!





若干好きなネタは使い回し気味です。

でもこちらの公開のほうが先だったりもします。

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