熊本県某所 キリシタン関連資料館にて
私、児坂宏美こさかひろみは出張で九州に来ていた。
熊本市内から車で二時間ほどの場所にある客先で打ち合わせをした。
商談は午前中に終わってしまった。
夕方には大阪に帰る飛行機に乗る予定だ。
数時間ほど空いた。
せっかくだから、観光していこうとスマホで近くの観光施設を探した。
キリシタン関連の資料館がすぐ近くにあった。
入館料300円だし、数時間の時間潰しにちょうどいい。
授業で習った程度には、キリシタン迫害の歴史を知っている。
そのゆかりの地に、今私はいる。
小高い丘の上にあるその施設からは海が見渡せて景色がいい。
インスタに上げるため、景色の写真をいくつか撮った。
駐車場はとても広いのに、止まっている車は数台で、人の気配はない。今日は営業しているのか心配になる程だ。
階段を上がると、入場券売り場の小窓の前で、誰かが肘をついて話していた。
小学校高学年くらいの子供だ。地元の子らしい。
窓口のおばさんが相槌を打って、笑っている。
私が近づいても、会話は切れなかった。
私はこういう内輪ノリが苦手だ。
割って入れない。
こういう時、私はいつも引いてしまう。
もじもじして立っていたら、おばさんが私に気づいた。
「〇〇ちゃん、お客さん」
と言って手を振った。子供はチラッと私を見て道を開けた。
「300円ね」
おばさんは、私を大人一人と決めつけて、いつもの手順らしく、領収書付きのチケットを切って、パンフレットと一緒にそこに置いた。
まあ、大人一人ですけど。
私が100円硬貨を3枚プレートに乗せるとおばさんは「行ってらっしゃい」と言いながらそれを引き上げ、またその子と話し始めた。
外観は多少寂れた田舎の施設という感じだったが、中は黒を基調として、照明が落としてあり、しゃれた感じの展示だった。
誰もいない。入場者はおろか、学芸員もいない。
貸切状態だ。
誰もいないミュージアムってちょっと怖い。
しかも展示品は負の遺産だ。
キリシタン迫害の歴史は見ていて楽しい気持ちになるものではない。
しかし、内容はよくまとまっていて、歴史が嫌いではない私は興味深く展示を見て行った。児坂宏美




