表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労死したので今度こそスローライフしたいのに、僕の知識がこの世界に必要すぎるらしい  作者: 悠々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/15

第 7 話:炎の賭け

バランの頑なな態度に、俺はため息をつく代わりに、静かに笑みを浮かべた。前世でも、こういう頭の固いベテランはいくらでもいた。彼らを動かすのは、正論や権威じゃない。動かしがたい「事実」だけだ。


「わかった。あんたのプライドは尊重しよう。だが、俺の言うことにも一理あるかもしれないとは思わないか?」


「戯言に理などあるか」


「では、賭けをしないか?」俺は提案した。「この小屋の隣に、俺の設計で小さな窯を一つ作らせてほしい。そして、あんたの窯と俺の窯、どちらが良い炭を作れるか勝負する。もし俺が負けたら、二度とあんたたちの仕事に口出しはしない。だが、もし俺が勝ったら……その時は、俺のやり方を学んでもらう」


俺の言葉に、バランは眉をひそめた。だが、その瞳の奥に、職人としての好奇心と、若造を打ち負かしてやりたいという闘争心が宿るのを、俺は見逃さなかった。


「……面白い。いいだろう、その賭け、乗ってやる。お貴族様の道楽に付き合って、その鼻っ柱をへし折ってやるわ」


バランは吐き捨てるように言った。これで、交渉は成立だ。



領主の館に戻り、リーゼに事の次第を報告すると、彼女は案の定、柳眉を逆立てた。


「賭け、ですって? クラウス様、正気ですか! ただでさえ資材は貴重なのです。そんな不確かなものに、土や木材、人手を割くなど……」


「これも必要な投資だよ、リーゼ」


俺は彼女をなだめるように言った。


「バラン親方を力で押さえつけても、良いものは作れない。彼のような職人を動かすには、彼自身に納得してもらう必要がある。この小さな窯は、そのためのプレゼンテーション資料だと思えばいい。最小限のコストで、最大の効果を生むためのな」


「プレゼンテーション……?」


聞き慣れない言葉に、リーゼは首を傾げる。


「ああ。この賭けに勝てば、俺たちは質の良い炭を安定して手に入れられる。それは、鍛冶屋が質の良い鋼を作ることに繋がり、領地全体の産業レベルを引き上げる。この小さな窯への投資は、その未来への鍵なんだ」


俺の真剣な目に、リーゼはしばらく何かを考えていたが、やがて深いため息をついた。


「……わかりました。今回も、クラウス様の費用対効果を信じます。ですが、予算は本当に、本当に、これが最後ですからね!」


釘を刺す彼女に苦笑しながら、俺は新しい窯の設計図を描き始めた。それは、煙突を取り付け、空気の流入量を調整できるようにした、ごく単純な構造の窯。


だが、この単純な構造こそが、アイゼンヴァルトの産業に革命をもたらす炎の揺りかごとなるのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ