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過労死したので今度こそスローライフしたいのに、僕の知識がこの世界に必要すぎるらしい  作者: 悠々


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第 5 話:希望の道

道作りが始まってから、三週間が過ぎた。


かつて獣道だった場所は、見違えるように姿を変えていた。緩やかな勾配を保ちながら、山肌を縫うように続く、幅の広い道。両脇には土留めが施され、雨水を逃がすための側溝も掘られている。


そして今日、ついに麓の町へと繋がる最後の区画が完成した。


「……できた。本当に、できてしまった……」


ハンス村長が、感極まった声で呟く。彼の周りでは、泥だらけの村人たちが、ある者は天を仰ぎ、ある者は隣の者と肩を叩き合い、喜びを分かち合っていた。皆の顔には、疲労と、それを上回る達成感が満ち溢れている。


その時、道の向こうから、軽やかな鈴の音と、車輪のきしむ音が聞こえてきた。


「荷馬車だ! 麓の町から、荷馬車がやってくるぞ!」


誰かの叫び声に、村人たちの視線が一斉に注がれる。やがて、一台の荷馬車が、俺たちの目の前でゆっくりと止まった。御者を務める商人は、信じられないといった顔で、真新しい道を何度も振り返っている。


「すげえ道だ……こんな山奥に、どうやって……」


荷馬車が村に到着した。その報は瞬く間に領地中に広がり、村は祝祭のような喜びに包まれた。子供たちは荷馬車の周りを走り回り、大人たちは商人から直接、塩や布を買い求めている。今まで見たことのない光景だった。


村人たちが、俺を見る目が変わった。そこにあるのは、もはや領主代行への畏怖ではない。共に汗を流し、不可能を可能にした仲間への、そして未来を切り拓くリーダーへの、絶対の信頼だった。


俺の隣で、リーゼがそっと呟く。


「費用対効果……いえ、それ以上のものが、確かに生まれましたね」


彼女の眼鏡の奥の瞳が、誇らしげに細められている。


俺は、活気に満ちた村の様子を眺めながら、安堵の息をついた。


スローライフには、まだ程遠い。問題は山積みだ。だが、この道は、間違いなく未来へと繋がっている。


これが、俺のスローライフへの、確かな第一歩なのだと、そう信じることができた。


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