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第 50 話:新たな時代の幕開け
祭りの喧騒が遠ざかる夜。
俺とリーゼは、二人でよく訪れる、領地を見下ろす丘の上にいた。
眼下には、広場の焚き火や、家々の窓から漏れる灯りが、まるで地上に生まれた星座のように、温かく瞬いている。遠くから、人々の楽しげな歌声が風に乗って聞こえてくる。
「……夢のようです」
俺の隣で、リーゼがそっと呟いた。
「数年前まで、この領地は、冬を越せるかどうかさえ分からなかったのに。今では、こんなにも多くの笑顔で満ちている」
「君が、支えてくれたおかげだ」
俺がそう言うと、彼女は静かに首を振った。
「いいえ。クラウス様が、私たちに未来を示してくれたからです」
俺たちは、醸造所特製のフルーツエールが注がれたガラスの杯を、そっと合わせた。カチン、と澄んだ音が、静かな夜に響く。
これまでの道のりと、そして、これから始まるであろう、新たな未来に。
杯に映る領地の灯りを眺めながら、俺は静かに思う。
アイゼンヴァルトの、本当の物語は、まだ始まったばかりなのだ、と。




