第 49 話:遠来の客
祭りの噂は、俺たちの想像を超えて、遠くまで届いていたらしい。
昼過ぎになると、立派な馬車が何台も、新しい道を通って領地へと到着した。
降りてきたのは、王都の豪商や、近隣の有力貴族たちだった。彼らは、物珍しそうに、しかし鋭い値踏みをするような目で、祭りの様子を視察している。
「ほう、これが噂のアイゼンヴァルト鋼か。見事な輝きだ」
「この透明な杯は……ガラスだと? これほどの品質のものを、平民が使っているのか」
「この紙……羊皮紙ではないな。軽くて、しかも安いと聞く。信じられん」
彼らは、俺たちの産み出した製品の数々に、驚きと、そして隠しきれない欲望の表情を浮かべていた。
特に、王都で一、二を争う大商人だという、恰幅の良い男は、俺の元へやってくると、にこやかな笑顔で言った。
「ベルクナー卿。素晴らしい。実に素晴らしいですな。この領地には、宝の山が眠っている。いや、あなた様自身が、歩く金脈ですな」
その目は、笑っていなかった。
俺は、彼らの視線の中に、かつて麓の町の商人ギルドで向けられたものとは違う、もっと大きく、もっと貪欲な欲望の影を感じ取っていた。
この祭りの成功は、アイゼンヴァルトの名を王国中に広めるだろう。
だがそれは同時に、俺たちを、もっと大きな世界の、複雑な利害関係の渦の中へと引きずり込んでいくことをも意味していた。




