第 4 話:土と汗の協奏曲
リーゼという心強い協力者を得て、道作りはついに始まった。
俺はまず、測量に使う道具を自作することから始めた。まっすぐな棒を三本組み合わせただけの簡易的な三脚。それに、水を入れた革袋と透明な管を繋いだ「水盛り」。これで水平を測る。あとは、石を吊るしただけの「下げ振り」で垂直を出す。
前世では当たり前だった道具も、この世界には存在しない。だが、原理さえ分かっていれば、いくらでも応用は利く。
集まった村人たちは、俺が作った奇妙な道具と、羊皮紙に描かれた計画書を、不安そうな顔で見比べていた。
「クラウス様、本当にこんなもので道が……?」
ハンス村長の言葉は、村人全員の気持ちを代弁していただろう。
「ああ。百の言葉より、一つの結果だ。見ていてくれ」
俺は自ら水盛りを担ぎ、設計図に記した出発点に立つ。そして、村人たちに杭と槌を渡し、指示を飛ばし始めた。
「よし、そこだ! その杭を打ち込んでくれ!」「次は十歩先、水盛りの線が杭の頭と重なる場所だ!」
俺は測量だけでなく、自らも鍬を手に取り、土を掘り、もっこを担いだ。領主代行が、村人たちと同じように泥と汗にまみれて働く。その姿は、彼らにとって衝撃的だったに違いない。
最初は半信半半疑で、言われた通りに動くだけだった村人たちの目に、少しずつ変化が表れ始めた。
「若様、こっちの土は固えぞ! 手伝ってくれ!」
「おう、今行く!」
誰かが声を上げれば、別の誰かが助けに入る。俺が指示を出す前に、彼ら自身が考え、動き始めたのだ。
「安全管理は徹底してくれ! 疲れたら無理せず休むように!」
俺は前世の現場監督のように声を張り上げる。その声に応えるように、村人たちの力強い返事が返ってくる。
夕暮れ時、リーゼが炊き出しのスープを持って現場にやってきた。彼女は、活気に満ちた現場と、汗を輝かせて働く村人たちの姿を見て、驚きに目を見開いていた。
鍬を振るう音。槌を打ち込む音。人々の掛け声。
それは、不揃いだが力強い、アイゼンヴァルト領で初めて奏でられる希望の協奏曲だった。




