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第 48 話:開幕の鐘
そして、建領祭の当日がやってきた。
アカデミーの鐘が、高らかに祭りの開幕を告げる。
村の中央広場は、これまでに見たこともないほどの活気と熱気に満ち溢れていた。
広場の中心には、ゲルトの鍛冶場が誇る、磨き上げられた鋼の農具がずらりと並び、その品質の高さに人々が目を見張っている。
特設された酒場では、ガラスの杯に注がれた黄金色のエールが、飛ぶように売れていく。仕事仲間と、家族と、杯を酌み交わす人々の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。
子供たちは、製紙所が作ったパンフレットを手に、スタンプラリーのように各工房を巡っている。その手には、綿菓子のように甘く膨らんだ、新しいお菓子が握られていた。
誰もが、この豊かさが、誰かから与えられたものではなく、自分たち自身の汗と知恵で掴み取ったものであることを、実感していた。
それは、飢えと寒さに怯えていた、貧しい山領地の過去との、完全な決別の証。
俺は、人々の笑顔の輪の中で、胸が熱くなるのを感じていた。
スローライフとは、ただ何もしないことではない。
こうして、人々の幸福な営みを、穏やかな心で眺めていられる時間。それこそが、俺が本当に求めていたものなのかもしれない。




