第 47 話:祝祭の準備
建領祭の開催が決まると、領地全体が、まるで一つの生き物のように活気づいた。
鍛冶場では、ゲルトが弟子たちを叱咤しながら、祭りで展示即売するための、最高品質の鋼製品を打ち続けている。その槌音は、祝祭の始まりを告げるファンファーレのようだ。
ガラス工房では、職人たちが、エールを飲むための美しいガラスの杯を、一つ一つ丁寧に作り上げていた。陽光を浴びてきらきらと輝くそれは、まるで宝石のようだった。
醸造所では、バランが厳選した麦とホップを使い、この日のために特別なエールを仕込んでいる。樽から漏れ聞こえる発酵の音は、祭りの期待感を静かに高めていく。
そして、製紙所とアカデミー。
リーゼの指揮のもと、アカデミーの生徒たちが、祭りの見どころや会場の案内図を記した「パンフレット」を、木版印刷で大量に刷っていた。自分たちの学んだ知識が、領地全体の喜びに繋がる。その事実に、子供たちの顔は誇らしげに輝いていた。
誰もが、自分の仕事に誇りを持ち、自分たちの手で、最高の祭りを作り上げようと、目を輝かせている。
俺は、そんな領民たちの姿を、ただただ眩しく、そして愛おしく眺めていた。
俺が本当に作りたかったのは、豊かな社会という「結果」だけではない。
こうして、人々が自らの意思で、喜びを創り出していく「過程」そのものだったのかもしれない。




