第 45 話:未来への祝杯
アイゼンヴァルト産のエールと、山のベリーを使ったフルーツエール、そしてアルコール度数の高い蒸留酒は、麓の町の商人たちの間で、瞬く間に新たな高級品として評判になった。
領地の財政は、鉄鋼、紙、そして酒という三本の柱を得て、盤石なものとなった。
そして、医療環境の改善は、目に見える形で結果を出し始めていた。消毒液の普及により、怪我や出産時の死亡率は劇的に低下し、領民の平均寿命は着実に延びていった。
ある収穫祭の夜。
広場の中央には大きな焚き火が焚かれ、その周りで領民たちが、エールの杯を片手に歌い、踊っている。子供たちの手には、印刷された物語の本が握られている。その顔には、貧しかった頃の暗い影はなく、未来への希望と喜びに満ち溢れていた。
俺は、リーゼと共に、少し離れた場所からその光景を眺めていた。
「クラウス様」
リーゼが、ガラスの杯に注がれた黄金色のエールを、俺に差し出す。
「領民の皆が、あなたに感謝を捧げたい、と」
俺は、その杯を受け取り、高々と掲げた。
広場にいる全員が、一斉に俺に注目し、それぞれの杯を掲げる。
「アイゼンヴァルトの未来に、乾杯!」
俺の言葉に、割れんばかりの歓声と、杯を合わせる音が応える。
それは、俺たちが自らの手で掴み取った、豊かさと、安全な未来を祝す、最高の祝杯だった。




