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第 43 話:黄金色の奇跡
醸造所の建設は、これまでのどのプロジェクトよりも、陽気な雰囲気で進んだ。
俺は、前世の知識を元に、徹底した衛生管理を職人たちに叩き込んだ。すべての樽や道具は、熱湯で消毒する。雑菌の混入を防ぐことが、美味しいエール作りの第一歩だからだ。
そして、野生の酵母の中から、最も発酵力が強く、良い香りを生み出す優良な株だけを選び出し、純粋培養することにも成功した。
麦芽と、山で採れたホップ、そして清らかな水を使い、温度管理を徹底して仕込みを行う。
数週間後。
発酵を終えた樽の栓を抜くと、ぷしゅー、という心地よい音と共に、芳醇な香りが辺りに立ち込めた。
グラスに注がれた液体は、美しい黄金色に輝き、きめ細やかな白い泡を冠している。
「こ、これが……エール……」
ゲルトが、恐る恐るその一杯を口にする。次の瞬間、彼の目が見開かれた。
「うめえ! なんだこりゃ、今まで飲んだどんな酒よりもうめえぞ!」
その声に、他の職人たちも次々とグラスを呷る。広場には、驚きと喜びの声が響き渡った。
仕事の後に、仲間たちと語らいながら飲む、冷えたエールの一杯。
それは、日々の労働の疲れを癒し、人々の心に温かい灯をともす、ささやかな、しかし何物にも代えがたい奇跡だった。




