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第 41 話:渇いた心
領地は物質的に豊かになった。食料は足り、家にはガラス窓が入り、子供たちは紙の教科書で学ぶ。
だが、俺は人々の顔に、まだ何かが足りないのを感じていた。
ある日の夕暮れ、仕事を終えた男たちが、広場でぼんやりと座り込んでいるのを見た。彼らの顔には、日々の労働の疲れだけが浮かんでいる。そこに、喜びや楽しみの色はなかった。
食文化は、相変わらずパンと塩漬け肉、そして薄いスープが中心。娯楽といえば、たまに村の若者が歌うくらいのもの。
そして、もっと深刻な問題もあった。
先日、木材の加工作業中に、一人の職人が大怪我を負った。傷口はすぐに塞がったが、数日後に化膿し、高熱を出して生死の境をさまよったのだ。幸い、体力があったために一命をとりとめたが、もし子供や老人だったら危なかっただろう。
この世界には、まだ「衛生」という概念が乏しい。
人々の心を潤す、楽しみ。
人々の体を守る、医療。
俺は、次の目標を定めた。
この領地に、心と体の両方を潤す、新たな産業をもたらすことを。




