第 34 話:風景が変わる日
ガラス瓶の製造が軌道に乗ると、俺は次の目標である「板ガラス」の開発に着手した。
溶けたガラスを平らな板にする。言葉にすれば簡単だが、これは瓶作りとは比較にならないほど難しい技術だった。均一な厚さを保てず、すぐに割れてしまうのだ。
俺たちは、溶けたガラスを平らな金属板の上に流し、ローラーで引き延ばすという、前世の「フロート法」に似た原始的な方法を試した。何度も失敗を繰り返し、大量のガラスを無駄にした末、ついに、歪みは多いものの、向こう側が透けて見える、一枚の板ガラスが完成した。
「やった……! やりましたよ、クラウス様!」
ゲルトたちが、泥だらけの顔で歓声を上げる。
俺は、その貴重な最初の板ガラスを、ある場所へ運ばせた。アカデミー、かつての小さな教室だ。
石工職人が、校舎の壁に窓枠を作り、そこに、初めての板ガラスを慎重にはめ込んでいく。
その瞬間、教室の風景は一変した。
今まで、薄暗いランプの光しか届かなかった室内に、冬の柔らかな陽光が、さんさんと降り注いだのだ。
「うわあ……!」
「明るい! 外が、見えるよ!」
授業を受けていた子供たちが、一斉に歓声を上げる。彼らは、窓に駆け寄り、ガラスの向こうに見える雪景色に、目を輝かせていた。
冬の厳しい寒さを遮りながら、暖かい光だけを中に招き入れる、魔法の壁。
それは、アイゼンヴァルト領の長い冬の歴史の中で、初めて見る、希望の風景だった。




