第 32 話:砂からの創造
翌日の定例報告会議で、俺は新しい計画を発表した。
「ガラスを作る」
俺の言葉に、ゲルトやバランをはじめとする部長たちは、ぽかんとした顔で顔を見合わせた。
「ガラス、ですかい? あの、王都の貴族様が持ってる、キラキラした杯のことですかい?」
「そうだ。だが、俺が作りたいのはそんな贅沢品だけじゃない。瓶や、窓ガラス、そしていずれは……視力を助けるための道具もだ」
俺は、ガラスの原料が、この領地にも豊富にあることを説明した。川で採れる白っぽい砂「珪砂」。そして、木を燃やした後に残る「木灰」。これらを、高炉で培った高温制御技術で溶かせば、ガラスは作れるはずだ、と。
だが、職人たちの反応は芳しくなかった。
「砂が……透明になる? まるで魔法みてえな話だな」
ゲルトの言葉に、皆が頷く。彼らにとって、土や石から鉄を生み出すのは経験の延長線上にあっても、砂から透明な宝石のようなものが生まれるというのは、理解の範疇を超えているのだろう。
そして、最も現実的な懸念を示したのは、やはりリーゼだった。
「クラウス様。また新しい実験ですか? 高炉の維持費だけでも大変なのです。それに、ガラスが本当にできるという保証はどこにも……」
彼女の心配はもっともだ。俺は、反論する代わりに、静かに立ち上がった。
「保証はない。だが、可能性はある。俺は、その可能性に賭けたい」
俺は会議室を出て、高炉の隣に確保していた空き地へと向かった。
頭の中には、耐火煉瓦と白炭の熱を最大限に活かす、新しいガラス溶解窯の設計図が、すでに鮮明に描かれていた。
まずは、やってみせる。それが、俺のやり方だった。




