第 27 話:百年の計
翌日、俺は領地の主だった者たちを集め、新たな計画を発表した。
「学校を、作る」
俺の言葉に、集まった村長や職人たちは、きょとんとした顔を見せた。
「がっこう……ですかい? それは、一体……」
ハンス村長が、困惑したように尋ねる。
「子供たちに、読み書きと計算を教える場所だ。それも、貴族の子弟だけではない。この領地の、すべての子供たちにだ」
俺の宣言に、今度は反対の声が上がった。
「若様、正気ですかい! 子供は家の手伝いをするのが仕事だ! 読み書きなんぞ覚えて、何の役に立つってんだ!」
ある農夫の言葉は、多くの領民の意見を代弁していただろう。日々の生活で手一杯の彼らにとって、教育は不要な贅沢に思えるのだ。
俺は、彼らに向かって静かに語りかけた。
「役に立つさ。文字が読めれば、新しい農法を記した本が読める。計算ができれば、商人と対等に取引ができる。そして何より、知識は、誰にも奪われない、自分だけの財産になる」
俺は続けた。
「俺がいなくなっても、リーゼがいなくなっても、この領地が発展し続けるためには、君たち自身が、そして君たちの子供たちが、自ら考え、問題を解決する力を身につける必要がある。この学校は、そのための、百年先を見据えた投資なんだ」
俺の真剣な言葉に、騒がしかった場内は静まり返った。
その沈黙を破ったのは、リーゼだった。彼女は一歩前に出ると、凛とした声で言った。
「私に、その教師役を、お任せいただけないでしょうか」
彼女の瞳には、この領地の未来を自らの手で育みたいという、強い意志が宿っていた。




