第 23 話:嫉妬の影
俺たちが「紙の盾」で中央の役人と戦っている間にも、問題は別の場所で起きていた。
「クラウス様、大変です! 麓の町へ向かう荷馬車が、途中で止められました!」
血相を変えて執務室に飛び込んできたのは、商人ギルドとの連絡役を務める村人だった。
「止められた? いったい誰に」
「隣のグライフェン領の騎士たちです! 我々の領地を通るには、通行料として積荷の三割を寄越せ、と……!」
グライフェン領。当主は、確か古くからの家柄を誇る男爵だったはずだ。俺たちの成功を快く思っていなかったのだろう。あからさまな妨害工作だった。
積荷の三割など、払えるはずがない。それは、我々の交易路という生命線を、力ずくで断ち切ろうとする行為に他ならなかった。
「なんという卑劣な……!」
リーゼが、怒りに声を震わせる。
「すぐに騎士団を編成して、奴らを追い払いましょう!」
血気盛んなゲルトが息巻くが、俺は静かに首を振った。
「駄目だ。相手は由緒ある貴族。こちらから手を出せば、それを口実に攻め込まれかねない。そうなれば、我々に勝ち目はない」
アイゼンヴァルト領の兵力など、なきに等しい。武力での解決は、最悪の選択肢だった。
だが、このまま黙って見過ごすわけにもいかない。領地の経済は、再び止まってしまう。
中央からの圧力。そして、隣領からの妨害。
俺は、内と外から同時に迫る脅威を前に、難しい決断を迫られていた。




