第 20 話:集い始めた才能
麓の町との独占契約は、すぐに結果となって表れた。
数日後、ギルド長の荷馬車が、大量の銀貨を積んでアイゼンヴァルト領にやってきたのだ。それは、この領地が始まって以来、初めて手にするまとまった現金収入だった。
執務室で、リーゼが震える手で銀貨を数えている。
「すごい……すごいですよ、クラウス様……! これだけあれば、冬を越すための食料が十分に買えます! それに、新しい事業への投資も……」
彼女の眼鏡の奥の瞳が、喜びで潤んでいる。帳簿の数字しか信じなかった彼女が、俺の計画がもたらした現実の利益を目の当たりにして、心から感動しているのが伝わってきた。俺も、思わず頬が緩む。
だが、契約がもたらしたものは、金だけではなかった。
噂は、人を呼ぶ。
「アイゼンヴァルトという山奥の領地が、とんでもない鋼を作っているらしい」
そんな噂が、職人や技術者たちの間に広まるのに、そう時間はかからなかった。
ある日、一人の男が領地を訪ねてきた。日に焼け、屈強な体つきをした、四十代ほどの男だった。
「俺は、西の鉱山で働いていた、鉱山技師のロルフと申します。アイゼンヴァルト鋼の噂を聞き、いてもたってもいられずやってきました」
彼は、俺の前に深く頭を下げた。
「これほどの鋼を生み出す土地には、必ず良質な鉱脈が眠っているはず。どうか、この俺を雇ってください! クラウス様の元で、この腕を振るわせていただきたい!」
彼の瞳には、技術者としての純粋な探求心と、新たな挑戦への熱意が燃え盛っていた。
俺は、喜んで彼の手を取った。
アイゼンヴァルトは、新たな才能を迎え入れ、さらなる発展の時代へと、力強く歩みを進め始めたのだった。




