第 18 話:品質という名の刃
商人たちの嘲笑が満ちる応接室で、俺は静かに立ち上がった。
「……言葉で説明しても、無駄なようですね」
俺はそう言うと、護衛の兵士が控えていた部屋の隅から、一本の丸太を運び込ませた。直径三十センチはあろうかという、硬い樫の木だ。商人たちが、何事かと訝しげな顔で俺を見ている。
俺は無言で、ゲルトが作ったナイフを抜き放った。そして、丸太の断面に刃を当てる。
シュルッ、と。まるでバターでも削るかのように、木屑が滑らかに舞い上がった。俺はそのまま、数秒で丸太の表面を薄く一周、削り取って見せた。
「なっ……」
商人たちから、驚きの声が上がる。普通のナイフでは、こうはいかない。刃が木に食い込み、途中で止まってしまうはずだ。
「ギルド長。あなたの店で一番良いというナイフを、お借りできますかな?」
俺の言葉に、ギルド長は顔をひきつらせながらも、腰に差していた装飾過多なナイフを差し出した。
俺は、そのナイフと、アイゼンヴァルト鋼のナイフを、お互いの刃が向き合うように構える。
「な、何をする気だ!」
ギルド長の制止を無視し、俺は二本のナイフの刃を、力強く打ち合わせた。
キィン! という甲高い金属音。
次の瞬間、ギルド長のナイフの刃が、無残に欠け落ちていた。対する俺のナイフは、刃こぼれ一つなく、鈍い輝きを放ったままだ。
静寂。
応接室を支配していた傲慢な笑みは、完全に消え失せていた。商人たちの顔には、信じられないものを見たという驚愕と、そして、目の前の「本物」に対する、剥き出しの欲望が浮かんでいた。
形勢は、今、完全に逆転した。




