第 17 話:値踏みの目
数日後、俺はリーゼとゲルトを伴い、麓の町にある商人ギルドを訪れていた。
立派な石造りの建物。出入りする商人たちの身なりも良い。アイゼンヴァルト領とは、何もかもが違っていた。
ギルドの応接室に通された俺たちの前に現れたのは、腹の出た、恰幅のいいギルド長だった。彼は、俺たちの身なりと、俺が差し出したナイフと鍬を、値踏みするような目で見比べた。
「ほう、アイゼンヴァルトの……ベルクナー様でしたかな。して、こんな見事な品を、一体いくらで売りたいと?」
ギルド長の言葉には、貧しい山領主をからかうような響きがあった。
俺は冷静に、リーゼが算出した最低希望価格を告げた。それは、製造コストに、今後の領地運営のための利益を上乗せした、決して不当ではない価格のはずだった。
だが、ギルド長はそれを聞くと、大声で笑い出した。
「はっはっは! ご冗談を。たかが鉄の鍬一本に、銀貨五枚だと? ナイフ一本に銀貨三枚? 山の民は、金銭感覚までおかしくなってしまったらしい」
彼の周りにいた商人たちからも、くすくすと嘲笑が漏れる。
「いいだろう。お困りのようだ。このわしが慈悲で買い取ってやろう。鍬とナイフ、合わせて銀貨一枚。どうだ、ありがたく思え」
二束三文。いや、それ以下だ。これでは、作れば作るだけ赤字になる。俺の頭の中に、出発前にリーゼが「この価格を割ったら、高炉は止めなければなりません」と訴えていた顔がよぎる。
隣に立つゲルトが、侮辱に耐えかねて拳を握りしめている。
「……ギルド長。その価格では、お話になりません」
俺が静かに言うと、ギルド長は肩をすくめた。
「ならば、お引き取り願おうか。おたくがなくとも、わしらが扱う鉄製品はいくらでもあるんでな」
交渉は、完全に暗礁に乗り上げた。
商人たちの侮蔑の視線が、俺たちに突き刺さる。




