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過労死したので今度こそスローライフしたいのに、僕の知識がこの世界に必要すぎるらしい  作者: 悠々


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第 15 話:鋼の産声

数ヶ月の歳月を経て、鉄の巨人はついに完成した。


天を突くようにそびえ立つその威容は、もはや単なる炉ではなく、領地の新たなシンボルと呼ぶにふさわしかった。


そして、運命の火入れの日がやってきた。


高炉の前には、領民のほとんどが集まっていた。誰もが固唾を飲んで、歴史的な瞬間を見守っている。俺の隣には、緊張した面持ちのリーゼと、職人たちが立っていた。


「――火を入れろ!」


俺の号令と共に、バランが炉の麓にある焚口に松明を投げ入れた。


最初は静かだった。だが、やがて炉の内部から、地鳴りのような轟音が響き始める。下から送り込まれた熱風が、白炭を燃え上がらせ、炉内の温度を急激に上昇させていく。


ゴオオオオオッ!


巨人が、まるで産声を上げるかのように咆哮した。


俺たちは、鉄鉱石と白炭を、炉の頂上から交互に投入していく。灼熱の炉の中で、鉄鉱石は溶け、不純物と分離されていく。


そして、半日が過ぎた頃。


「出るぞ!」


ゲルトが叫んだ。炉の最下部にある出銑口が開かれると、そこから眩いばかりの光を放つ、溶けた鉄の奔流が流れ出してきた。


「おお……!」


領民たちから、どよめきと歓声が上がる。それは、誰も見たことのない、黄金色の川。不純物を取り除かれた、純粋な鉄の輝きだった。


冷やされた鉄の塊を、ゲルトが興奮した手つきで打ち始める。カン、カン、と響く音は、これまでとは比べ物にならないほど澄んでいた。


やがて、彼の手に一本のナイフが完成した。


その刃は、鏡のように光を反射し、吸い込まれるような切れ味を誇っていた。試しに木の枝を削れば、まるでバターのように滑らかに切れていく。


アイゼンヴァルト鋼の誕生。


それは、貧しい山間の領地が、鉄の力で世界に名を馳せる、新たな歴史の始まりを告げる、力強い産声だった。


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