表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労死したので今度こそスローライフしたいのに、僕の知識がこの世界に必要すぎるらしい  作者: 悠々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

第 13 話:土と炎の試行錯誤

リーゼの警告はもっともだった。だが、俺は引き下がるわけにはいかなかった。高炉なくして、アイゼンヴァルトの未来はない。


「リーゼ、頼む。失敗のリスクは俺が負う。だが、成功のためには君の力が必要だ。資材の管理を、君にしか頼めない」


俺の真剣な説得に、彼女は深いため息をつきながらも、最終的には頷いてくれた。こうして、領地の命運を賭けた「耐火煉瓦」の開発が始まった。


俺は前世の知識を頼りに、領内の土や石を片っ端から集めさせた。粘土質の土、川砂、白っぽい石英の塊。それらを様々な比率で混ぜ合わせ、形を整え、炭焼き小屋の隅に作った小さな試験炉で焼き固めていく。


だが、現実は甘くなかった。


「だめだ! またひび割れた!」


ゲルトが悔しそうに叫ぶ。焼きあがった煉瓦を白炭の炎で熱すると、ものの数分で無残な亀裂が入ってしまうのだ。


失敗、失敗、また失敗。


試作した煉瓦の残骸が、山のように積み上がっていく。それに比例して、リーゼが管理する資材と食料の備蓄は、目に見えて減っていった。


村人たちの間に、不安と不満の空気が広がり始める。


「若様は、また無茶なことを始めたらしい」

「道作りの時とは違う。今度は本当に領地が潰れるんじゃないか」


そんな声が、俺の耳にも届いていた。焦りが、胸を締め付ける。


もう後がない、三十回目の試作。俺は、これまでとは違う、ある特定の谷から採れる、粘り気の強い赤土の比率を極端に増やしてみた。そして、細かく砕いた石英を混ぜ込む。


焼きあがった煉瓦は、これまでとは明らかに違う、ずしりとした重みと密度を持っていた。


俺たちは固唾を飲んで、その煉瓦を炉の中へ入れた。青白い炎が、煉瓦を舐めるように包み込む。一分、五分、十分……。


「……ひび割れない」


誰かが、震える声で呟いた。


煉瓦は、炎の中で赤く輝きながらも、その形を保ち続けている。


「やった……やったぞ!」


ゲルトが雄叫びを上げた。俺も、思わず拳を強く握りしめる。


長いトンネルの先に、ようやく見えた一筋の光。逆転の光が、確かに見えた瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ