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過労死したので今度こそスローライフしたいのに、僕の知識がこの世界に必要すぎるらしい  作者: 悠々


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第 12 話:巨人の設計図

俺の「高炉建設」宣言は、すぐに領内の職人たちの間に広まった。


執務室に集められたのは、鍛冶屋のゲルト、石工の親方、そして炭焼きのバラン。彼らは、俺が羊皮紙に描いた巨大な炉の設計図を、固唾を飲んで見守っていた。


「こ、これが……高炉……」


ゲルトが、かすれた声で呟く。


設計図に描かれているのは、彼らの知る炉とは似ても似つかない、天を突くような塔だった。高さは十メートル近く、下部はどっしりと太く、上に行くほどにすぼまっていく。複雑な配管が絡みつき、まるで生き物の内臓のようだ。


「そうだ。上から鉄鉱石と白炭を交互に投入し、下から熱風を送り込む。そうすることで、炉の中は常に超高温に保たれ、質の良い鉄を、二十四時間、安定して溶かし続けることができる」


俺の説明に、職人たちは息を呑んだ。一日中鉄を溶かし続ける炉など、想像もつかないのだろう。


「しかし、クラウス様」口を開いたのは石工の親方だった。「これほどの高温に耐えられる石材など、この辺りには……。普通の石では、すぐにひび割れて崩れてしまいます」


彼の指摘はもっともだった。高炉建設の最大の課題。それは、超高温に耐える「耐火煉瓦」の存在だった。


そして、その課題に追い打ちをかけるように、冷徹な声が響いた。


「無謀です」


いつの間にか執務室に入ってきていたリーゼが、分厚い帳簿を抱えながら、きっぱりと言い放った。


「この規模の建造物に必要な資材、人件費を概算しましたが……道作りの比ではありません。もし失敗すれば、今度こそ領地は破産します。いえ、破産どころか、冬を越せずに全員が飢え死にです」


彼女の言葉に、室内の空気は凍り付いた。職人たちの顔に浮かんでいた熱気が、急速に冷めていく。


「リーゼの言う通り、リスクは大きい。だが、成功した時のリターンは、それ以上に大きいんだ」


俺は、不安げな顔をする職人たちと、厳しい表情のリーゼを交互に見つめた。


「この高炉は、俺たちの領地の心臓になる。農具を、工具を、そしていずれは武器をも生み出す、鉄の巨人だ。この巨人を育て上げることができれば、アイゼンヴァルトは生まれ変わる」


俺は設計図の中心を、指で強く叩いた。


「まずは、この心臓を守るための、最強の肋骨……耐火煉瓦の開発からだ」


俺の瞳に宿る揺るぎない決意を見て、誰もが言葉を失っていた。


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