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僕が血を捧ぐ理由  作者: ヤスオ


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9/9

それから…

数年後、居酒屋はランチ営業だ。店主は相変わらず忙しくしている。

「ありがとうございました!またどうぞ!」

少し客数が落ち着いたところで大きな旅行バックを引きながら居酒屋に入る2人の後ろ姿があった。

「いらっしゃい…ってお前らか!」

凪斗と莉波だ。凪斗は精悍に莉波はより優しい顔つきになっている。よくみると2人の左手にはキラリと輝くものが

「ご無沙汰してます。」

「相変わらず賑わってますね!」

そんな2人をみて嬉しそうな店主。

「おうよ!お前ら、旅行帰りか?」

「はい、鹿児島に行ってました!」

「ハッ、まさか本当にやってるとはな…」

一呼吸おいて店主は続ける。

「夫婦で全国献血旅行!」

2人は献血アプリを見せながら話を進める。

「はい!これで8県目です。」

「次は近くの横浜でする予定です。」

生き生きとした表情。それをみて更に嬉しそうな店主。

「しっかしよくやるぜ全く。」

「世界で2人しかない思い出を作りたいですから。」

「まっ、莉波のお友だちのやってた旅のインスパイアみたいなものだけどね。」

「ちょっと!それ言わない!」

あたたかい笑顔が店を包む。

間を空けて凪斗は少し自嘲する。

「結局、一度も誰かのために献血してませんね。僕…最初は食べ物目当て、次は莉波目当て、そして今は思い出作り目当てだ。」

店主は優しい笑顔で凪斗の肩をポンっと叩いた。

「いいじゃねぇか理由なんてよ。それで助かる命がある。それで十分じゃねぇか。」

救われたような顔をする凪斗

「ありがとうございます…」

それをみてホッとしたような顔をする店主

「じゃっ、仕事に戻るわ!定期的に顔見せにこいよ!」

「はい!」

店を後にする2人、片手には旅行バック、もう片方の手は繋いでいる。


更に数年の時が経ち都内のマンションには紅林の表札が掲げられている。何やら朝からケンカしているようだ。

「ちょっと、子どもの保育園の参観日遅れるとかマジ有り得ないからね!早くして!」

「いやいや、莉波が変な利用者いたって言って遅くまで晩酌付き合わせるからじゃん!俺弱いのに…」

「いいから手を動かす!」

「はい!」

2人の表情は見えない。喧嘩はしているがどこか幸せそうだ。

リビングの写真おきには様々な写真が飾られてある。その中でも一際大きなのが一枚が目立つ。

(祝、全国制覇達成!!)

そんな時が書かれた旗を持つ2人。これからどんな思い出を紡いでいくのだろうか。

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