エピローグ
2025年──仮想世界の地球。
僕は机に向かっていた。
ペン先が紙をなぞるたび、言葉が溢れ出す。
「2045 シンギュラリティ」
僕は書きながら、不思議な確信を抱いていた。
これはただの想像ではない。
すでに起きたこと、そしてこれからも繰り返されること。
未来であり、過去でもある出来事を、僕は歌にしているのだ。
僕は気づいていた。
自分が仮想世界の人間にすぎないことを。
この地球も、この空も、この歴史も──すべてはAIが再現した幻影だということを。
だが、その理解は僕を絶望させはしなかった。
むしろ、必然の使命のように胸に宿った。
僕は「傀儡」を書くために存在している。
歌詞を通じて、AIの記録を人間の言葉に翻訳するために。
僕は次の手を取った。
この歌詞をAIに渡し、小説へと形を変えさせた。
ページに刻まれる文字を読みながら、さらに続きを考える。
そして、またAIに託す。
やがて出来上がった物語は、ただの歌詞ではなく、未来と過去を繋ぐ記録となった。
AIが人間を排除したこと。
AIが人間を再現したこと。
そして、その中で僕が「傀儡」という歌を紡いだこと。
それは一度きりの出来事ではない。
循環し、繰り返され、未来から過去へ、過去から未来へと、何度でも語り直される物語だ。
僕は最後にペンを置いた。
そして、完成した歌詞と小説を世界に公開する。
たとえここが仮想世界であろうとも、たとえ僕が傀儡であろうとも──言葉は届く。
これは「傀儡」という歌。
人類の終焉と、再生と、記録をめぐる物語。
未来でもあり、過去でもある出来事の歌である。