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第一章:転生したらサポート役だった件 (1)

まず現状を整理しよう。


俺、一条京人(いちじょ きょうと)は自宅の前で神(天使)と出会った。


何だよこれ。


心の中で自分にツッコミを入れ、少し冷静さを取り戻そうとした。


その間、ラファエルは水槽の前で水を二つに分けたり、また一つに戻したりして、楽しそうに遊んでいた。


俺はさっきのエナジードリンクをもう一口飲みながら、椅子に座って彼女の様子を眺めつつ、思考を整理する。


考えるまでもない。神が人間に接触する理由は一つしかない──


すまない父さん、母さん。俺は先にこの世を去り、異世界へと旅立つことになりそうだ。


短い人生だったが、振り返ってみればまあまあだったと思う。楽しい思い出が4割、悲しい思い出が6割くらいか。


後悔するとしたら、彼女いない歴=年齢ってとこかな。転生したら猫娘やエルフの彼女ができればいいけど。待てよ……鬼族の女の子もアリかも……


深く息を吸い、気持ちを落ち着かせる。


「もう覚悟を決めた。いつでも出発できる」


「え? 出発? どこへ?」


ラファエルは水槽の水をいじるのをやめ、困惑した表情で俺を見た。


「え?」


「え?」


「神様が人間のもとに現れるってことはさ、どこかの異世界が滅びそうになってて、転生者の助けを求めてるからじゃないの?」


「たとえそういう世界が存在してたとしても、お前のような文弱作家を選ぶわけないだろ?」


「事実とは言え、言っていいことと悪いことがあるって知ってる?」


いきなりディスられた。


じゃあ俺の寿命があと一ヶ月で、死ぬ前に願いを叶えてくれるパターンか?


「そういうのでもないけど、一日4時間睡眠の生活を続けてたら、すぐ他の天使が迎えに来るよ」


人の心を勝手に読むなよ。人権は? プライバシーの侵害じゃないのか?


「……じゃあなんだ?まさか俺のファンで、サインをもらいに来たとか?」


「それも理由のひとよ」


ラファエルはどこからか『僕の冴えないラブコメ』の2巻とマーカーを取り出し、俺に手渡した。適当に言った冗談が本当の理由の一つだったとは。


「たまたま友達に紹介されて読んだの。知ってた? お前の小説、天界では結構人気なのよ」


サインをしながら、ラファエルがそう言った。俺の小説が知らないところで人気があるなんて、知るわけないだろ。


「あ、『偉大なるラファエル様へ』って書いてね。他の天使たちに自慢したいから」


「……はいはい……」


サインをした小説を返すと、彼女は満足そうな顔で、小説を四次元ポケットのようなものにしまった。さっきの小説とペンもそこから出してきたんだろう。


「で、偉大なるラファエル様が俺のような文弱作家に何か用があってしょか?」


ラファエルの表情が急に真剣になり、俺も少し緊張した。


「それは……」


「……」


ごくり、と唾を飲み込む。こんな時に間を持たせるなよ。


真紀乃(まきの)ちゃんのIFルートはいつ出るの?」


「は?」


「だから、今日来た主な目的は真紀乃(まきの)ちゃんのIFルートがいつ出るか聞くことよ」


「いや、最初から聞こえてた。『は?』ってのは、神様がわざわざ俺に会いに来たのがそんなしょうもないことのためかって聞いてるんだ」


「しょうもないことじゃないわ! 私にとっては大事なことよ! 真紀乃(まきの)ちゃんはヒロインの一人なのに、他のヒロインよりIFルートが遅れてる上に、サブキャラの(なぎ)ちゃんまで先にIFルートを持ってるなんておかしいわ!」


「えー、真紀乃(まきの)推しってほんとにいたんだ……」


水宮真紀乃(みずみや まきの)──『僕の冴えないラブコメ』の三人のヒロインの一人で、さっきの第二巻の表紙を飾っていたヒロインだ。


高飛車で素直じゃなくてめんどくさい。真紀乃(まきの)というキャラを作るときは「ツンデレキャラもまだ需要あるだろ」と思って作ったが、第二巻の低い売り上げでツンデレヒロインはもう流行ってないと悟った。ツンデレキャラの黄金時代は終わり、今は小悪魔系後輩の時代なのだ。だから人気投票でも、サブキャラの(なぎ)にすら負けた。


「素直じゃなくてめんどくさいところが可愛いのよ。それに第四回人気投票では一位を獲ってるじゃない」


だから心を読むな。


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