第97話 金色の昆虫
台風、皆さんは大丈夫でしたか?
グリム達は森の中を歩いて回った。
Dに続けとばかりに周囲をくまなく探している。
しかしなかなかモンスターに出会えない。
ゴールド系のモンスターなら、すぐに見つかってもおかしくはない。森の中だと尚目立つのだが、いくら視線を頼りに凝らしてみても影も形もない。
流石にこれだけ探して回っても見つからないとなれば、自然と焦りが出てくるはずだ。
しかしながら、グリム達は全く焦ってはいなかった。
常に余裕な表情を浮かべると、キョロキョロと視線を配る。
草木の揺れ具合や木の幹の裏側。モンスターが少しでも動けば分かる。
プレイヤーでも同然で、グリム達は背後にも気を付ける。
常に意識を巡らせ続け、スキルも全力で活用していた。
そんな中、Dが神妙な顔付きをした。
「なにも引っ掛かりません」
「なにも引っ掛からない? Dはなんのスキルを使っているのかな?」
「はい。【気配察知】を使っているんですけど、なかなかモンスターに出会えなくて」
Dは【気配察知】を使ってモンスターの存在を感知しようとしていた。
けれどDのスキルに反応しないということは、この辺りにはモンスターが居ない証拠だ。
グリム達は困ってしまう。表情に焦りは無いが、苦戦の様子が浮かび上がると、ふと【観察眼】と【看破】を使ってみることにした。
寄り目になって眼力に全てを集約する。目が痛くなってしまい、奥歯を強く噛んで耐えた。
「うーん、なかなか見つからな……」
グリムは立ち止まった。ピタリと止まり、後を続くフェスタとDはグリムの背中にぶつかる。
一体なにが起きたのか。グリムのことを心配し、フェスタとDは声を掛けた。
「グリム?」
「どうしたんですか!? もしかして何処か怪我でもされたんですか?」
「そうじゃないよ。まさかこんなに上手く行くなんてね。まるで計ったみたいだよ」
グリムの口から高揚感のある言葉が出た。
フェスタとDはキョロキョロ視線を配ってみる。
しかしグリムはある一点を見つめていた。
視線の先には木の幹がある。おそらくはクヌギだろうが、樹皮に孫れるように潜んでいた。
「二人共ここに居て。捕まえて来るから」
グリムは気配をできる限り消そうとした。
影なども映らないように注意する。
もしもバレたら逃げてしまうと思い回り込むようにして忍び寄りが、なんのいたずらか、太陽の陽射しが草木の影から射し込んで、金色の鎧をピカピカと映し出した。
「アレは……」
「虫ですか? でもゴールドですよ!」
フェスタとDも気が付いたらしい。
樹皮にしがみついていたのは明らかに蟲。しかも昆虫型。
立派な大顎を武器にする、少し小さめな昆虫で、明らかにクワガタだった。
「確かリアルにもいたよね。黄金のクワガタ」
グリムは息を殺して近付いた。
ゆっくり手を伸ばして捕まえようとするが、影に気が付いたのか、クワガタ=オウゴンクワガタは翅を広げて飛んだ。
「あっ!?」
「と、飛んじゃいましたよ!」
クワガタは飛んで逃げてしまうかと思った。
グリムは慌てて追いかけるが、オウゴンクワガタはグリムに向かって牙を剥く。
まさかの攻撃に転じてきたため、グリムは素早く大鎌を取り出すと、湾曲した刃を振り落とした。
「向かって来てくれるなら好都合かな」
グリムは〈死神の大鎌〉を振り上げると、そのままオウゴンクワガタを落とそうとする。
けれどオウゴンクワガタは素早く躱すと、グリムに向かって突撃して来る。
立派な顎を剥き出しにし、グリムの首を掻き切ろうとする。
けれどグリムも身を捻り躱すと、大鎌で翅を閉じさせようとする。
「グリム、どうするのー?」
「どうもこうもないよ。このまま捕まえるよ」
「つ、捕まえるってどうやってですか?」
「決まっているでしょ。こうするんだよ!」
オウゴンクワガタが飛んでくる。
首を掻き切られ、そのままやられる。そんな即死判定を喰らいたくもないので、グリムは素早く大鎌を逆手に持ち替えた。
湾曲した刃の丸みのある部分でオウゴンクワガタを取り押さえる。
「それっ! これで動けないよね」
一瞬だけ翅の動きを止めると、後はいつも通り素手で捕まえた。
オウゴンクワガタは翅が閉じて飛べなくなると、グリムはフェスタの元まで戻る。
それからフェスタにインベントリから採って欲しいものを頼んだ。
「フェスタ、虫かごって持ってたよね?」
「うん。持ってるよー!」
この間デンショバトで押し売りに遭った時に買わされたものだ。
だけどこうして役にも立ってくれた。
グリムは虫かごの中にオウゴンクワガタを入れると、そのまま大人しくなったクワガタを観察する。
「綺麗なクワガタだね」
「そうだねー。んでさ、これどうするの?」
オウゴンクワガタはとても綺麗だった。
金色に輝いていて、虫かごの透明度に合わせるように、陽射しを受けて綺麗だった。
けれどフェスタに問われ、グリムは眉根を寄せた。
「そうだね。私は要らないから、フェスタが貰ってくれたらいいよ?」
「うーん。私もいいかなー。Dはー?」
「わ、私は大丈夫です!」
如何やら誰も要らないらしい。
おまけにDは虫が苦手なようで、グリムの後ろに隠れた。
となればグリム達が持っていても幸せにはなれない。そう思い結論は早めに出た。
「そっか。それじゃあ後で売りに行こうか。ポイントも無事に手には入ったから、もう必要無いよ」
「そうだねー。欲しい人のところに行った方が幸せだもんねー」
グリムはオウゴンクワガタを捕まえ、なんと千ポイントも獲得できた。
かなり単価が良いことを悟り、これは狙えるかもとグリムは思う。
少し良くないことかもしれないが、グリムは捕り過ぎなければと心に決め、ポイントを荒稼ぎする手段を見つけて薄っすら喜んだ。
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