第96話 初めてのゴールド系
草がガサゴソと揺れていた。
一体何が居るのか。グリム達は息を飲んだ。
揺れの大きさ的に小さな小動物系のモンスターだと予測する。
グリムはフェスタとDの顔色を窺い、背中の外套の裏側から隠していた大鎌を取り出す。
ギラリ、湾曲した刃が煌めいた。
柄の一番後ろの部分を握り込むと、そのままてこの原理で振り下ろす。
草の中に〈死神の大鎌〉が消えて行くと、モンスターの鳴き声が聞こえた。
「キュルルルル!」
如何やらビックリさせただけらしい。これは失敗。グリムは可哀そうなことをしたと感じる。
しかし草の中ではガサゴソガサゴソと激しく揺れが続いていた。
もしかすると動揺で飛び出してくるかもしれない。
そこがチャンスだと思い目配せをしてタイミングを計る。
「みんな行くよ、囲んで」
「OK。それじゃあ私は待ち伏せっと」
「わ、私は反対側に回り込みます!」
グリム達はそれぞれ素早く持ち場に付いた。
すると草の中で暴れるモンスターを追い込み猟方式で誘い込むと、草の中から何か飛び出す。
大鎌を振り上げたことで再度ビックリしてくれたらしく、勢いよく飛び出して、フェスタの方に走って行く。
「キュルルキュルルキュルルルゥ!」
四足歩行の小動物が走り抜ける。フェスタは捕まえようとするが驚いてしまい半歩程足が下がった。
だけどしっかりと姿を捉えることはできた。
眩いて輝く金色のモンスター。如何やらゴールド系らしい。
「うわぁぁ! な、なに?」
「見てください、金色のリスですよ!」
Dが叫んだ。確かに木の幹を伝って上へ上へと登っていく様はリスだった。
しかし全身が金色に輝いている。
如何やら本当にゴールド系のリス型モンスター=ゴールド・スクワロルだった。
ゴールド・スクワロルは丁寧に爪を使って樹皮に引っ掛ける。
クルクルと回りながら普通のリスとは違う行動を取っている。
かなり厄介。これだと狙いが付けづらくて敵わない。
グリムは苦い表情を浮かべた。
もちろんフェスタも同じくで、Dだけが澄んだ顔をしている。
ボーッと目で追うとチラチラグリムに視線を飛ばす。なにか考えがあるらしい。
「登っちゃいましたよ?」
「そうだね。それでD、なにか策があるんだよね?」
「あっ、はい! これを使ってみたいと思います」
Dが見せたのは〈運命の腕輪〉。なにをするのだろうと思ったが、急に形状が変化する。
Dの腕をスルリと離れる。すると巨大な円形状の武器、戦輪と呼ばれるチャクラムに変化した。これを使うということはモード:攻撃。つまりはDが戦って見せるというわけだ。
「珍しいねー。Dがやるんだー」
「確かにそうだね。でもやってみたいんだよね?」
「はい! 私もお役に立ちたいんです」
責任感があるのは良いことかもしれないが、この瞳の輝きは自分のために使うべきだ。
グリムは速やかに見計らうと、Dの意見も尊重する。
どちらが正しいのかなんて分かりやしない。けれどやってみたいという意識に訴えかけることにした。
「それじゃあお願いするよ。Dの戦い方を見せて」
「は、はい! では……行きます!」
Dは体を捻ってチャクラムを後ろに下げる。
明らかに何かをしようとしているが、何をする気なのだろうか?
グリムとフェスタは少しだけ考えてみる。するとある考えが脳裏に浮かんだ。
瞬きを何度かしてしまうと、口から良くない擬音が出る。
「「ん?」」
「それっ!」
まさかのことだった。Dは冷静で自信たっぷりだったから、もっと確実な方法があると思ったのだ。
けれど実際はかなり運の要素が強かった。まさかの〈運命の腕輪〉を投げつけたのだ。
確かに高いところで身を顰めるゴールド・スクワロルを狙うには良いアイデアではある。
だけどそんな雑なことで本当に落ちてくれるのか。一瞬だけ不安がよぎるが、そんなもの必要無かった。
「当たりますよ。私は【投擲】スキルを持っています!」
「【投擲】……なるほど」
Dが【投擲】スキルを持っていると知り確信を持った。
それと同時に〈運命の腕輪〉がゴールド・スクワロルに命中する。
【必中】のスキルは無くても【投擲】スキルで補正を行う。
これによってゴールド・スクワロルを狙い落したのだ。
ゴトン!
硬い金属質の武器に叩き落とされた衝撃で、ゴールド・スクワロルは受け身も取れずに地面に落下する。
そのまましばらく待っていると動かなくなってしまった。如何やら倒さなくても良かったらしい。
Dはもしかするとここまで計算していたのでは? 様々な想像は働くが、目の前で喜んでいるDを邪魔するのは野暮だった。
「やった。やりましたよ、グリムさんフェスタさん!」
「凄いねD。まさか一発で倒しちゃうなんて」
「えへへ、油断してくれていたおかげですよ。それに私を信じてくれたグリムさんのおかげです。そのおかげで背中を押されました!」
Dはグリムのことを背一杯持ち上げてくれた。けれどこれはDが起こした結果であって、グリムは何もしていない。ムッとした表情を一瞬浮かべるが、すぐにDの頭を撫でることにした。本当によくやってくれたし、これでポイントも獲得できたのだ。
「本当にお疲れ様。先制のスタートダッシュはこれで上手く行ったよ」
「えへへ。ゴールド・スクワロルだけで五百ポイントも手には入りましたよ。この調子なら上手く行きそうですね」
「そうだねー。それじゃあ、次々行こっかー」
「うん。Dに負けてられないね」
グリムとフェスタもやる気が満ち満ちた。
Dが速やかにモンスター撃破したことで負けてられない時が馳せる。
今回のイベントは本当に楽しくなりそうだと、この瞬間からより確定した。
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