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第94話 《死神》の汚名を笠に着て

 いよいよ今日、ゴールドラッシュ・イベントが開催される。

 いつものことながら、イベントに参加するプレイヤーはメニューからイベントバーをタッチして表示する。

 そのまま〔イベントに参加〕を押すと、グリム達はイベントに無事参加できた。

 もの凄く簡単な作業で、グリム達は気合を入れ直す。


「それじゃあ頑張ろうか。今回のイベント、とにかく稼ぐよ!」

「「はい!」」


 いい返事だった。グリム達の気合は十分だ。

 その光景は傍からでも見ることができ、集まっている広場では、たくさんの視線が飛び交う。

 しかしながらその視線は気合を入れ直したことで周りの注目を集めた訳じゃない。

 若干引いている目をしていて、関わり合いになりたくないといった具合だ。

 グリムも若干だが嫌な予感に気が付いていて、その予感は的中してしまった。


「うん?」

「「「うわぁ!」」」


 完全にグリムのことを恐れていた。何故だろうか? 名前は明らかになっていないはずだ。

 けれどグリムの赤い目が爛々と輝くと、周りに集まっている男性プレイヤーは慄いてしまう。

 少し話を聴いてみようか。グリムは近付いてみたが、何故か距離を取られてしまう。

 頭を悩ませて頬をポリポリ掻くと、「どうして?」と呟いていた。


「グリム、諦めよう」

「そうですよ。グリムさんはカッコいいんですから!」


 何故だろう。フェスタとDは私の肩や腕に手を付けた。

 グリムは二人の目を見て何となくの直感で思っていることを予測する。

 二人は私にこう訴えていた。「その格好は諦めよう」と言っているみたいに感じる。


「もしかして私の格好のこと?」

「そうだよ。グリムの格好、このゲームでも結構イタい方だから」

「い、イタい? それは自覚あるけど、あんなにビビられるものかな?」

「うーん、やっぱりあの噂じゃないかな?」


 フェスタは今まで黙っていたことを心の内から解き放つ。

 Dも口元を覆うと、行っていいのか悩んでいた。

 だからだろうか。グリムは唇を噛み、眉根を寄せて皺を作る。


「あの噂ってなに?」


 なにを言っているのか。グリムには分からなかった。

 完全に知らない人の顔をしていると、グリムは新事実を訊かされることになった。

 如何やらあの時参加したイベント、荒城での夜襲が噂として広まっているらしい。


「えっ、荒城の夜襲って?」

「えっ、知らないの? 一番新しいPvPイベントの時なんだけど、サンリガル城跡地をたくさんのプレイヤーが根城にしてた時、たった一人で名立たるプレイヤー葬り去った白髪赤眼の《死神》。大振りの鎌を引っ提げ、亡き者にして行くその姿はまるでPCOの死神。どうどう、どっかの誰かさんと、共通点多すぎじゃないかなー?」


 フェスタは瞬きをして、チラチラとグリムのことを言い当てる。

 確かにアバターの見た目や記憶では当たっている節も多い。

 否、多いのではない。それは紛れもなくグリムのことだった。


「いや、それ私だね」


 思い返してみればそんなこともあった。あの時は人数差が桁違いだったから、いつものスタンスを切り替えて、少し切なくて怖い素振りを見せた。

 だけどそれが功を奏したから一件落着。かと思ったのはどうやら自分だけだったようで、そこが最大の発端となり、グリムに汚名を着せていた。

 もちろん捉え方を変えればなにも心配する必要はない。けれど活躍の度にこれだと流石に堪えるものがあった。


「あはは、やっぱりかー。じゃあその汚名は一生拭えないし、笠に着て楽しんでいこう。うんうん、それが良いそれが良い!」

「全然良くないんだけどな?」


 フェスタはいわゆる二つ名と呼ばれる異名があってカッコいいと思っているらしい。

 自称二つ名じゃないことで、箔が付いていると思っているのだ。

 けれどいざ付けられればこの有様で、非常に困ってしまうのだ。


「あ、あの。私はカッコいいと思います。汚名なんかじゃないです!」

「あー、うん。そうだね。多分そうなんだよね」


 正直に言おう。Dは讃えてくれているが、グリムはあまり嬉しくは無かった。

 何とか払拭できるチャンスはないだろうか?

 私は《死神》なんて呼ばれる器じゃない。グリムはそう思いつつも、イベントが始まる合図にいつも通り飲まれるのを待っていた。


「それじゃあ改めて、行くよー!」

「は、はい!」

「グリムも、そろそろ転移されるでしょ? せーのっ!」

「はいはい。それじゃあ改めて、稼ぎに行くよー!」

「「おー!」」


 時間になった。フェスタの号令からのグリムの掛け声。

 沈んでいた空気を切り替え、一旦忘れることにする。

 これから待っているのは、モンスターにプレイヤーとの死闘。

 今から楽しみで、グリムも心の奥底ではワクワクしていた。

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