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第93話 行くよ、ゴールドラッシュ!

「そらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 フェスタは大剣を肩に掛け、一気に振り下ろした。

 目の前には亀の様で亀ではない謎のモンスター、甲羅トータスの姿があった。

 一体何処が亀ではないのかは分からない。

 だけど亀の甲羅が頭にも付いていて、とにかく防御面が厚かった。


「くっ、硬ったいなー!」

「それならこうすればいいんだよ。私に合わせて、D」

「は、はい! 〈運命の腕輪〉モード:攻撃(オフェンス)!」


 カコーン!


 グリムの大鎌とDは攻撃モードに切り替えた腕輪で攻撃した。

 大鎌の湾曲した刃がソッと触れた。

 戦輪と呼ばれるチャクラムがつるんと首筋を掻き切る。

 けれど甲羅トータスはなかなか倒れてくれない。


「ええっ!? 効かないんですか!」

「そうみたいだね。なるほど、皮膚も硬いんだ」

「ど、どうするんですか!」

「どうもこうもないよ。硬いなら、柔らかいところを叩けばいいんだよ!」


 大鎌の湾曲した部分、一番丈夫なところを甲羅の下に潜りこませる。

 そのまま指を滑らせると、全身の体重を移動させる。

 一気に突き上げると、甲羅トータスは全く動かなかった。当然だ。甲羅トータスの方がグリムよりも重たい。

だけど動かないということは、大鎌の刃が柔らかいところに否応なく突き刺さるのだ。


「ガパ! ガァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 甲羅トータスはダメージを受けていた。

 ミリずつではあったが、HPがドンドン削れていく。

 甲羅トータスは悲鳴を上げ、これこそが勝利への最短距離だった。


「き、効いてる。効いてますよ!」

「だろうね。ほら、フェスタがトドメだよ」

「OK! それじゃあ、おんらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 苦しんでいる甲羅トータスに酷いことをした。

 しかしこれで倒せる。フェスタは素早く切り掛かると、大剣を一気に振り下ろした。

 このまま甲羅を破壊するんじゃないかと思う勢いだ。

 けれどそれは妄念で、甲羅にぶつかった大剣はそのまま滑るように首の付け根へと落ちた。


「「「あっ!」」」


 ゴトンと首が落ちた。甲羅トータスはそのまま即死判定を受けてしまい、光りとなって消滅した。

 あまりにも呆気ない幕引きだった。グリム達も本望ではなく、流石に瞬きを何度もして思考がフリーズする。

 しかし倒したことは変わりない。経験値もドロップアイテムも手に入った。

 

「た、倒しちゃったね?」

「うん、倒しちゃったね」

「ど、ど、ど、どうするんですか!? こんなにあっさり、ここまでの苦労はなんだったんですか!?」

「うーんと……助走?」

「も、もう、分からないです」


 グリム達は考えることを止めにした。

 とりあえず倒したことの余韻に浸ることにしたが、上手く噛み締めることもできなかった。胸の中のモヤモヤが滞りなく溢れると、フェスタは両腕を付き上げて叫ぶ。


「あー、もう! これじゃあゴールドラッシュも勝てないよー!」


 ・・・——

 沈黙が流れ、木霊するのは虚空に消えるフェスタの声。

 もはや叫んでいるのかも分からないが、一応グリムとDは相槌を打つ。


「勝てるとは思うけど?」

「は、はい。なんやかんや倒しましたから」

「もっとカッコよく勝ちたいんだよー! そのために依頼も受けて予行練習してたのにー」


 グリム達には目的があった。そのために今回の依頼を受けたのだ。

 その目的とは今度開催されるらしいゴールドラッシュ・イベントに参加するため。

 何でも金策イベントのようで、ギルドホームを買いたいが資金繰りに難航しているグリム達にとっては飛んで火にいる夏の虫。もはやこれ以上に理に叶ったイベントは用意されていなかった。

 もしかすると運営陣がグリム達プレイヤーの知らないうちに観察・接触をしていて、よりリアルな声を聞いているのではないだろうか? そう思っても不思議ではないレベルで、グリム達は若干委縮する。


「この感じでもイベントで勝てるのかなー?」

「うーん。フェスタの言う“勝てる”がよく分からないけど」

「“勝てる”は金策が順調にできるのかって話だよ。噂だと、ポイントがそのままPになるんじゃなくて、ポイントの質でPが決まるんだって」

「ううっ、ポイントとPとpが乱立していて分かり難いですね」


 Dが頭を悩ますのも無理はなかった。言葉だけではちょっとしたアクセントの違いでしか差別化ができない。

 だからグリムはメモを軽く取ってDにも分かるように説明を簡略化させる。


「つまりたくさん倒したらいいわけじゃないんだよ。フェスタの信じた噂だと、質の高いモンスターを倒せばその分報酬も美味しくなるんだよね?」

「ちな、そういうこと」


 それだけ見ればとても分かりやすいし加えて面白そうだ。

 けれど問題は相手がゴールドモンスターであること。

 おそらく高いAIに加え、防御面も厚いだろう。フェスタが不安になるのも無理はない。


「確かにポイントを量産できるかはモンスターの耐久面次第だね」

「でしょー。ここでたくさん稼いでおけば、あとがきっと楽になるもんねー。全力でやらないとー」

「それもそうだね。よし、それじゃあ頑張ってみようか」


 確かに今を頑張れば後が楽になる理論は賛同できる。

 けれどその張り切り具合は尋常ではない。

 そのせいだろうか? 不安になってフェスタが振り返って先に行くのを見計らい、Dがグリムに耳打ちした。


「は、張り切っていますねフェスタさん」

「そうだね。だけど納得はできるよ」

「そうなんですか? 流石は親友ですね!」

「ふふっ、そうじゃなくてPvPがあるからね。強いプレイヤーと戦えるのが楽しみなんだよ、きっと」


 フェスタはアグレッシブな性格をしている。

 だからポイント集めも大事だが、他のプレイヤーとの交流が何よりも楽しみ。

 その感情は熱を帯び、背中から絶えず漏れ出す。グリムの目ではお見通しで、頼もしい戦闘狂だと拍手を送るのだった。

 いや、拍手を送るべきなのだろうか? 呪いの装備でどれだけやれるのか、グリムも少し懸念したが楽しみなのは変わらずに不敵な笑みでDをビビらせてしまっていた。


「ぐ、グリムさん。少し怖いですよ?」

「そうかな?」

「は、はい。その、グリムさんにとっては汚名かもしれませんが、助長してしまいますよ。その、わ、私はカッコいいと思います!」

「お、汚名?」


 それを聞いてピンと来てしまった。

 首をブンブン振るって忘れようとする。

 だけどその汚名が功を奏してくれれば幸いだと、グリムはポジティブに切り換え、先を行くフェスタに追い付くためDと一緒に軽く小走りするのだった。

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