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第88話 見えない視線2

 グリム達はイシヘンライノスを倒したことでレべルも上がっていた。

 ステータスが向上して嬉しい。

 にこやかな笑みを自然と零すと、インベントリも確認することにした。


「そう言えばドロップアイテムはなにがあるかな?」

「そう言えばそうだねー。って、今回倒したのはグリムだから、グリムが一番レアアイテムをゲットしたんじゃないかなー?」

「そうだね。一応トドメを刺したのは私だけど、これも二人のおかげだよ」

「と、とりあえず確認して見ましょう!」


 グリム達はそれぞれアイテムを確認することにした。

 すると見慣れないアイテムが入っている。

 ハンティングゲームらしく、ドロップしたアイテムはモンスターの素材だった。


「石に皮……かなり渋いね」

「でもさー〈角岩の皮〉って書いてあるよ? ネームドってことはかなり高値なんじゃないかなー?」


 〈〉で書かれているアイテムはネームドだ。

 即ちそれでしかない証拠で、グリム達の装備もこれに該当する。

 となればこのアイテムも金地高値に変わってくれると見た。

 それならまだましだが、一体何に使えばいいのか、グリム達にはまだ分からない。


「うーん、私の方はハズレかなー?」

「そうなんだ。Dはどうかな?」

「ちょっと待ってくださいね。えっと、石ころが幾つかドロップしてます。それと、〈角岩の蹄〉? が入ってました!」


 如何やらフェスタよりもDの方が良いアイテムが入っているらしい。

 ドロップアイテムとは完全ランダム。基本的にはLUK(運)の高さに準じているらしい。

 けれど例外もあった。例えば活躍だ。


 特定のモンスターを倒す際、最後の一撃を与えたプレイヤーには確率変動でより良いアイテムがドロップする。

 それから部位破壊。特定の部位を破壊することで、破壊に成功したプレイヤーや破壊に加わったプレイヤーには特定部位のアイテムがドロップするのだ。


 そのおかげだろうか。フェスタとDの目がキラキラしていた。

 何故かグリムは期待されてしまっている。

 表情を硬直させてしまったが、グリムもインベントリの新規アイテム欄を確認してみると、目を見開いてしまった。明らかに目ぼしいものが入っている証拠だ。


「なになに! なにが入ってるの?」

「〈鋭い角岩〉だって」

「「〈鋭い角岩〉?」」


 フェスタとDは首を捻っていた。それはグリムももちろんだ。

 表情は渋くなり、如何したものかと悩んでしまう。

 するとグリムの口から出た言葉は、喉の奥から込み上げるものだった。


「とりあえず、帰ろうか」


 あまりにも突発的だ。一体何と返せば良いのか、フェスタとDは唇を噛んでいた。

 ドロップアイテムの使い道が誰一人として分かっていない。

 まさかのありがた迷惑な現象に苛まれてしまい、結果的に忘れることにした。


「そうだねー、帰ろっか」

「はい、帰りましょう!」


 フェスタとDもグリムの気持ちと意図を組んでくれた。

 全員が全員、強敵に打ち勝った達成感からか、高揚感に浸りそれ以外の物が見えていないのだ。

 あまりにも戦った感想が薄い。だけど三人はとにかく依頼を無事に達成し楽しかったと笑みを零せるだけで嬉しかった。

 その足取りは軽やかで、フォンスまで帰路、ずっと満ち満ちていた。




「嘘でしょー!? イシヘンライノスも倒しちゃったんだけどー!」


 ユカイは悲鳴を上げていた。

 白くて広い空間の中で、頭を抱えて真白な天井を仰いでいる。

 悔しい。本気で悔しい。ユカイはムッとした表情を浮かべると、逆に項垂れてしまった。


「大丈夫、ユカイ?」


 アイはユカイのことを心配した。

 かなり頑張って作ったモンスターだったからか、こうも呆気なくやられてしまったことに溜息が出たのだ。

 無理もない。イシヘンライノスは何匹か作ってはいたが、新作モンスターとして、しかもギルド会館が本格稼働できたことを記念にして、満を持して参戦したのだ。

 けれどグリム達〈《アルカナ》〉には苦戦を強いらせたものの、強制ログアウトまではできなかった。

 もっと強いモンスターを作るべきかと悩んでいたが、フシギはそんなユカイを地味に励ました。


「十分だろ。不安を抱く方がバカだ」

「ば、バカ!?」

「そうだ。ユカイ、お前はパッションで生きているんだろ。だったら考えるのは野暮だ。呆れるくらいでいいんだ」

「フシギ……ぽくないよ?」

「うるさい。まあ、具体的に言えばイシヘンライノスは下の上くらいの強さしかないからな。実際、プレイヤーの討伐数よりもプレイヤーの撃破数が上回っているぞ」

「そうなのー! それじゃあいっかー」


 ユカイは散々悩んだ挙句、全部放り投げてしまった。

 頭の片隅、心の奥底、その何処にも存在していたはずの不安の種が潰される。

 これこそがパッションモンスター。ポジティブシンキングすぎて、現代日本人には決して属さない境地。

 アイとフシギはポカンとしてしまうと、なにか言わないとダメだと思って、パクパク口を金魚にした。


「楽観的だね、ユカイは」

「もちろん。落ち込むのは私らしくないもんね! よし、フシギ、次のアイデアを練るからプログラミングよしくぅ~」

「は?」


 フシギは幻滅していた。眉根を寄せて溜息を付いていた。

 頭を抑えるとかはしない。肩を小さく上下に上げ下げする。

 完全に不思議は呆れていた。だが、そんな強引さがユカイらしいと思えてしまうのが、友達の仲だと深く感じ取るのだった。


「それで次はどんなモンスターにするんだ?」

「えっ、まだ考えてないけどー?」

「……そうか」


 フシギは呆れ顔が真顔へと進化してしまった。

 本気で何も考えていないらしい。

 ユカイはにこやかな笑みを振る撒いているが、流石にと思いアイはフォローに入る。


「大丈夫だよ」

「なにが大丈夫なんだ? 私には分からないのだが……」


 アイのフォローがフシギの正論ストレートパンチで粉砕されそうになった。

 けれど何とか立て直し、ユカイの肩をポンと叩く。


「ユカイ、またカッコいいモンスターを考えよ!」

「うんうん。次はもっとカッコよくて強くて、プレイヤーをぎったんぎったんにするモンスターにするぞ!」


 まるで子供のように盛り上がっていた。

 アイもユカイに合わせて拳を天高く突き挙げる。

 一体どんなモンスターを作るのかな? アイは期待を込めていた。


「盛り上がっているところ悪いが、倒せないのは無しだからな」


 ゲーム性が脱線しないようにフシギは釘を刺した。

 それにしても強いプレイヤー達もいる。

 これはもっとPvP寄りなイベントも増やしたら面白くなる。

 フシギはそう考えて、次の企画書を考えるのだった。

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