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第86話 角岩の怪物3

 グリムはイシヘンライノスに踏み付けられた。

 全身が重たい。そして痛い。完全に死んだと思ったが、グリムは生きていた。

 視線の先、ほんの数ミリの先を覆うように、眩い光の膜が張られていた。

 それがイシヘンライノスのスタンプ攻撃を防いでくれていた。


「こ、これは……」

「【光属性魔法(小):プロテクション】です!」


 Dの声がした。これが魔法。グリムは初めて見る魔法スキルに驚く。

 高揚感が昂り出すが、それよりもまずは避難だ。

 グリムは素早くその場から退避すると、一旦失ったHPを回復する。


「ごはっぐはっ! ううっ、助かったよ、D」

「は、はい。はっ! 次が来ますよ」

「本当? それじゃあ少し下がるね」


 グリムはバックステップを器用に取り、その場から離脱した。

 急ぎ早だったが、イシヘンライノスの角攻撃は躱せた。

 けれどこれでようやく敵意を示されたらしい。本当の意味で倒せるようになった。


「フェスタ、挑発済んだね?」

「もちろんだよー。それじゃあピンチをチャンスに変えますかー」


 フェスタは大剣を槍に変えた。

 これも重量級の槍でフェスタも使い勝手が悪そうだ。

 けれどイシヘンライノスは角を武器に迎え撃とうとする。

 よっぽど自慢の角で粉砕したいらしく、距離を取られているこの状況下でも襲い掛かって来た。


「D、この前の防御は使える?」

「は、はい。五分程度なら。その間、私は攻撃に参加できませんけど」

「十分すぎるよ。今すぐできる?」

「は、はい! 〈運命の腕輪〉モード:防御(ディフェンス)!」


 Dが左腕を突き出すと、Dを中心点としてバリアが張られた。

 グリムとフェスタはそれを見守ると、完成と同時に後ろに下がって行く。

 その間もイシヘンライノスは突っ込んでくる。脚に重さによるダメージを受けているはずなのに、それすら構わない。よっぽどスタンプ攻撃でグリムが沈まなかったことが腹立たしいようで、もはやバリアすら無視だった。


「グリムー。あのサイ、私達がバリアに入る前に倒す気だよー?」

「そうだね。だけど無駄かな?」


 グリムとフェスタはバリアに逃げ込んだ。

 素早く移動すると、イシヘンライノスの角攻撃を喰らわない。

 代わりにバリアが防いでくれていて、その衝撃が外へと逃げて行く。


「その程度じゃこのバリアは壊れません!」


 Dの頼もしい発言に後押しされた。

 しかしイシヘンライノスは無駄に攻撃を続けて行く。

 ドーンドーンと体当たりを連続して繰り出すが、グリムとフェスタには届かない。

 けれど二人も前に出ないと攻撃ができないので、一瞬だけ均衡を保つ程度だった。


「ど、どうするんですかグリムさん。このまま守っていても……」

「そうだね。勝てはしないよ。だけど動きを止めることは大事なことだよ。ねっ、フェスタ」

「そういうことと!」


 フェスタは角を上から槍で叩いた。

 振りかぶった槍のタイミングと体当たりを繰り出し、少しだけ上顎を下げたイシヘンライノスの動きが絶妙に噛み合う。

 すると槍の重さも相まって、単純に重たい極太の角が動かせなくなった。それもそのはず、角の先端を抑え込まれてしまったせいで、重心が偏ってしまったのだ。


「グリム、動きは止めたよ?」

「ありがとフェスタ、D。それじゃあ決めさせて貰うよ!」


 〈死神の大鎌〉を振り上げると、角を使って駆け上がる。

 どんなモンスターでも倒せないわけがない。その常識は変らない。

 いくら体が皮膚の鎧で覆われていたとしても、通る場所は必ずあるのだ。


「その自慢の角にエネルギーと硬度が蓄積されているのなら、その根元は脆いはずだよ。しかもこのゲームでは一番脆い部分。そう、ここを狙えばいいんだよね!」


 グリムは眉間を狙って大鎌を振り下ろした。

 するとイシヘンライノスは死を悟り、最後の力を振り絞って思いっきり角を持ち上げる。

 グリムのことも吹き飛ばそうとする。そのまま角がグリムのことを貫こうとするが、グリムは気にしなかった。《死神》の戦い方。それは〈死神〉の力を使うことなのだ。


「知らないよね。私に物理攻撃は……効かないんだよ」


 グリムの体が角に貫かれる。

 Dは顔を覆って「きゃぁ!」と叫んだ。

 とんでもない衝撃な光景を目の当たりにしたが、グリムは死ぬことはなく、確率に打ち勝った。物理攻撃を完全に受け流し、そのままイシヘンライノスの眉間に真っ逆さまに落ちて行くと、〈死神の大鎌〉を叩き付けた。


「ゴォォォォォォォォォォォォォォォン!」


 イシヘンライノスは悲痛を受けた。

 全身が悶え苦しみ出し、その場で短い時間暴れ出す。

 けれど暴れれば暴れるほど大鎌が深く刺し込まれる。

 グリムは振り落とされないようしがみついていると、次第に動きが弱まった。

 イシヘンライノスはHPを失っていくと、完全に止まってしまったのだ。


「た、倒した?」


 Dが短く呟いた。イシヘンライノスはまるで大きな岩の様にその場で固まってしまう。

 グリムは全身を使って突き刺さった大鎌を引き抜くと、それが致命傷になったのか、イシヘンライノスは絶命してしまった。

 そこからピクリとも動かない。どんなモンスターでも倒せる。それがこのゲームの素晴らしいポイントだった。

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