第80話 ギルド名は〈《アルカナ》〉
ギルドネーム。全く決めていなかった。
早速息詰まってしまい、グリム達は互いに目配せをし合う。
困った顔をお互い見せない。けれど声は震えていた。
「ど、どうしよー?」
「どうしようって言われてもね」
「は、はい。ギルドネームなんて、今まで考えたこともありませんでした」
まさかの誰も考えてきていなかった。
いや、普通に考えれば思いついていたはずだ。
けれど馳せる気持ちのせいで時間効率を間違えてしまった。おまけに言えば他人任せになっていた。グリムですら反省すると、表情に影を落とした。
「うーんと、ファイアフェスティバル?」
「自分を出し過ぎだよ、フェスタ。みんなで考えるんだから」
「ごめーん」
謝らなくてもいい。捻り出してくれただけでありがたい。
けれどそれだとフェスタに寄ってしまう。みんなのためにならないと思って残念ながら却下した。
するとDがポツリ呟いた。
頼りなかったが、小声で唱える。
「えっと、その……運命の輪はどうですか?」
「運命の輪? それってタロットカードのだよね。どうして?」
「ど、どうしてって言われましても、その……私が〈運命〉を持っているからです」
「「えっ?」」
グリムとフェスタはなにかピンと来た。
けれど今はあえてスルーする。これは別案件で、後で要相談だ。
と言うことで残念ながらフェスタによって却下された。
少しだけ落ち込む肩をグリムは優しく撫でると、嬉しそうに顔を赤らめる。
「なかなか難しいね」
「はい……」
流石にこうして十分も経つと思考も薄れる。
一体如何したら良いのか。頭を悩ませる種になると、フェスタは諦めた様子でグリムに任せた。完全に人任せタイムに入っている。
「それじゃあさー、グリムが案を出してよー」
「私が?」
「そうだよー。グリムならいつものやつでなんとかするでしょ?」
まさかそんな投げやりなことを言われるとは思わなかった。
しかも直感をいつものやつで片付けられてしまった。
眉根を寄せ、グリムは表情を歪める。
「いつものって、そうだな……」
「頑張ってください、グリムさん!」
「応援や機体は無縁だよ。だけどちょっとカッコよくてシンプルかつまとまりのある……Dもそうだと仮定して、私達らしいもの……例えば……アルカナとか?」
ふと頭の中に思い付いたのは共通特徴だった。
グリムの〈死神〉もフェスタの〈戦車〉も元を辿ればタロットカードの大アルカナ。
グリムの場合は〈死〉なのだが、ここは共通として捉えても良いはずだ。
「「えっ」」
「やっぱりダメだよね。今のは無しで次の案を……」
「いい。凄くいい!」」
グリムは二人の反応に焦ってしまった。まさかこんな反応をされるとは思わずすぐに却下しようとする。
しかし逃げられなかった。むしろ好感を持たれてしまい、二人の目がキラキラし始める。
「もしかして、今の案を?」
「最高じゃんかー。カッコいいしカッコいい!」
「それ同じだよ」
「いえ、凄くカッコいいです。私、それがいいです!」
フェスタもDもグリムの案に賛成した。
まさか突拍子もなく共通点だけを捉えたものが採用されるなんて。
グリムはここまでの時間を返してほしくなった。
「それじゃあギルドネームは〈《アルカナ》〉にしてっと」
グリムは羽ペンをスラスラ動かして文字を書いた。
とりあえず一番の悩みは解決され、グリム達は安堵する。
後の項目で困るものはほどんどない。強いて挙げるなら、ギルドマスターとサブマスターだった。
「それじゃあ誰がする?」
「ギルマスはグリムでしょー?」
「そうです。私もグリムさんなら安心です!」
何故かグリムは推薦されてしまった。
困った様子で蟀谷を掻くが、二人の顔を見ると断り辛い。
それにここまでやったら自分がやった方が良いと感じた。だからだろうか、グリムは仕方なく半分でギルマスをする。
「となるとサブマスだけど……どっちがする?」
「わ、私は……」
「Dがやってみたら?」
「えっ、私がですか!?」
フェスタは面倒なのか分からないが、Dに押し付けようとしていた。言いや推薦していた。
なにか感じ取ったのだろう。グリムもフェスタの考えを多少なりとも理解すると、ここはDを推してみる。
「そうだね。フェスタは特攻だもんね」
「そう言うことー。だから任せた!」
「ふえっ!? そ、そんなことを急に言われても、私にできるか……」
「大丈夫だよ。私もDを推しているんだ。私にギルマスを任せた分はきっちりやって貰うよ」
グリムはDにそう言った。もちろんこれが枷になるようなら断ってくれてもいい。
幸いサブマスの枠は後でも融通が利く。
ここで如何するかはDの選択次第で、グリムとフェスタは視線を配った。
すると覚悟が決まったのか、Dはギュッと拳を握る。
「私にできるかは分かりませんが、やってみます!」
Dは期待に応えようとしてくれた。
それならグリム達は背中を押すだけだった。
「そっか。それじゃあ書いておこうかな」
グリムはサブマスの欄も記入した。
なかなか珍しい取り合わせになった。
上手くギルドが纏まって良かったと、グリムは書き終えてから一安心した。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。