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第75話 Dが声を掛けたなら

 グリムとフェスタはピジョンに報酬を貰う。

 袋一杯のお金を貰い、フェスタと半分で分ける。

 メニューを開いてみると、十分溜まっていた。

 何か大きな買い物をしてもいいかもしれないが、特に必要なものもない。

 なにせ二人は呪いのアイテムを装備している。他のアイテムは消費アイテム以外価値が無いのだ。


「それじゃあとりあえず聖水を買っておこうか」

「そうだねー。一ダースくらいかな?」

「本当ですか!」


 ピジョンはあからさまに喜んだ。

 目をキラキラ輝かせ、嬉しさの余り心の奥底の叫びが込み上がる。


「嬉しいです。うちで買い物をしてくださるのはお二人だけです!」

「「それはちょっと悲しいかな」」


 グリムとフェスタはハモってしまった。

 あまり嬉しくない。むしろ心が痛まないのかと不安に思う。

 けれどピジョンは大量に積まれた聖水の入った木箱をグリムとフェスタの前に置くと、とんでもない安い価格にしてくれた。


「いいんですか、この値段で」

「いいんです。大量入荷しているので、安くお売りできるんですよ」

「だけどこの値段はさー。なんの助けにもならないよー?」

「買っていただけるだけで嬉しいんです。それになにより、お二人には大変お世話になっているので。今後とも御贔屓にしてくだだいね」


 ピジョンからの見えない圧力を感じてしまった。

 けれどグリムとフェスタは断る義理もない。

 軽く頷くと、ピジョンは他にも余っていた消費アイテムを付けてくれた。


「ありがとうございます。それではたくさんサービスしちゃいますね!」

「そんなこともして貰っていいんですか?」

「もちろんですよ! 消費期限が切れる前に使ってくださいね」


 如何やらあまりに余っている消費アイテムをサービスしてくれるらしい。

 それはありがたい。常時使える物よりも消費アイテムの方が使い道があった。

 ピジョンもそれを分かった上で選別してくれる。大変ありがたく胸を撫でた。


「とりあえず回復ポーションを多めにしておきますね」

「ありがとうございます」

「それから毒消しポーションに麻痺消しポーション、起床ポーションも付けておきます」

「そんなに使うかなー?」

「備えあれば患いなしと言う言葉があるんですよ、フェスタさん」

「ふーん。それじゃあ貰っておくよー」


 ピジョンに上手く丸め込まれたフェスタ。

 とは言えグリムには通用しない。

 何故なら消費期限のラベルを見てみると、かなり近めになっていた。

 過ぎても使えなくはないだろうが、グリムの神妙な顔がピジョンの視線にチラついた。


「この辺りで良いですね」

「ありがとうピジョン。はい、お代」

「ありがとうございました。またのご利用……できれば常時アイテムの方が良いのですが……」

「ありがとうピジョン。だけど呪いの装備がある以上、絶対に他の装備を使うことはないよ」

「だねー。それじゃあまたねー」


 グリムとフェスタはピジョンにお礼を言った。

 丁寧に礼をされると、アイテム屋デンショバトを後にする。

 外に出るとやはり人通りが無い。つい脇を見れば商店街。

 本当にこの場所は立地は完璧に良いはずなのにと、グリムはピジョンを憐れむのだった。


「中々いい感じにアイテム買えたねー」

「そうだね。これだけ有れば当分困らないよ」


 正直ここまでサービスされなければ出費も嵩んでいた。

 もちろん金銭面的には大分余裕がある。

 けれど必要じゃないものまで買う気は無かった。

 グリムもフェスタも満足し、とりあえずこの後の予定を確認する。


「それじゃあこの後はどうしようか?」

「どうするって?」

「ゾンビ・パーティーも無事に掻い潜ったんだ。少しレベルの高いエリアに行っても問題ないはずだよ?」


 もちろん今から行くとは決まっていない。

 けれど低レベル帯のエリアではこれ以上の経験値はイマイチ期待できない。

 と言うことでグリムはフェスタの要望を少し聞いた。


「それで何処に行く?」

「うーん、全然決めてなかったなー。何処が良いだろー?」

「何処でもいいよ。だけど私達の戦闘スタイルを鑑みると、防御面が薄いからね。あまり強すぎるモンスター。特に攻撃特化は厳しいかもしれないよ」


 グリムの見立ては何一つ間違っていなかった。

 もちろん二人なら勝てる見込みもある。なにせ強いし呪いのアイテム持ちだからだ。

 けれど防御面が薄いことは事実で、この間もDが居なかったら危なかった。


「あっ!」

「どうしたの、フェスタ?」


 突然腕を組んだままフェスタが声を上げた。

 何か意味深すぎて警戒するグリムだったが、ふと視線に気が付いた。

 路地の向こうからグリムとフェスタのことを見つめる視線が痛いくらいある。

 数は一つ。もちろん危害を加える気は一切無いようで、ふと視線を向けるとそこには話題に上がった少女=Dが居た。


「Dちゃんがいるね。あんなところでなにしているんだろう?」

「うーん。私達を見てる?」

「どうして? もしかしてなにか話したいことでもあるのかな?」

「そうじゃない? ほら、モジモジしてたからきっと緊張しているんだよ。あっ、今隠れた」

「隠れなくてもいいのにね。少し声を掛けてみようか」


 Dは路地の裏で顔をひょっこり出していた。

 けれどグリム達に見られると緊張して顔を隠してしまう。

 だけどグリム達が声を掛けに行こうとすると、勇気を出してやって来た。


「あっ、Dちゃんが来たよ?」

「本当だー。一体なにかな?」


 グリムとフェスタは警戒心ゼロで振舞う。

 Dも緊張した様子は変らず、頬を真っ赤にしながらグリム達と面と向かった。


「こんにちは、グリムさんフェスタさん」

「「うん、こんにちは」」


 グリム達は丁寧に挨拶を交わした。

 そこからしばしの間沈黙が流れ、Dの口から喋り出すのを待つのだった。

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