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第72話 〈運命〉はしどろもどろ

 少女が一人坂道を歩いていた。

 こんな朝早く、同じような格好をした少年少女の姿がある。

みんな同じではないが、男女で別々の服を着て、手には人口革製の鞄を持っている。

 少女=学生で、市内の市立高校に通っていた。


「ふんふふーん」


 今日はいつもの少女では考えられないくらい上機嫌だった。

 にこやかな笑みを浮かべて、周りが見ても気味が悪いくらい。

 鼻歌混じりで、いつもは見られない光景に少しだけ距離感があった。


「おーい、運命(さだめ)~」


 遠く背後から声が聴こえた。

 振り返ってみると、そこには同じ色の制服、同じ色のネクタイを着用した少女が駆けていた。

 運命と呼ばれた少女は手を上げて「あっ、おはよう華火(はなび)」と挨拶を交わした。


「どうしたの運命。なんだかいつもと雰囲気が違うよ?」


 駆け寄って来た少女=藤咲華火(ふじさきはなび)はそう尋ねた。

 すると対面している少女=笠原運命(かさはらさだめ)は動揺して顔を真っ赤にさせる。


「そ、そうかな?」

「うん。いつもの陰キャオーラが今日は出て無いよ?」

「うっ、その言い方止めてよ。私、結構気にしているんだよ」

「そうなの? ごめん。私も悪気なかったし、いつもの運命を知っているからつい……でも、今日の運命はあれよ。何か良いことがあったってすぐに伝わる」


 流石は親友の華火だった。

 運命の心を見透かすと、ちょっと詰め寄る形で六割方積極性を見せる。


「良いこと、良いこと、うん。私、昨日ゲームで遊んでて」

「ゲームって、PCOのこと?」

「うん。それでゾンビの大群に襲われて動けなかったんだ」


 運命がそう答えると、頭の中にあの時の光景が浮かび上がった。

 何とか呪いのアイテムである装備のおかげで攻撃は凌げた。

 だけどあのままじゃ完全にやられてトラウマ必至だった。

 けれど、そんな怖くて泣き出してしまいそうな中、目の前に王子様が現れたのだ。


「カッコ良かった。黒の外套を着た、白髪赤眼の死神……」


運命が頭の中で思い起こした。

その姿は如何見ても死神そのもの。

だけど狩り取ったのは無垢な魂じゃない。仇を成すモンスター達の群れだった。


「ま、ま、マジ!? 今の話って本当!」

「う、うん。本当だけど。どうしたの、華火?」


 華火の雰囲気が一瞬で置き換わった。

 目をキラキラさせ、運命の肩をポンと叩いた。

 そのまま指で握り込み、筋肉が引き延ばされて痛い。


「ちょっと待って、痛い痛い痛い。痛いよ、華火」

「そんなのどうでもいいよ! えっ、PCOの《死神》に会ったの? しかもゾンビ・パーティーも参加したの! いいなー、こっちは全然遭遇(であわ)ないのに……華火ばっかりズルい」

「なにがズルいのか分からないよ」


体をブンブン振り回された。

首が座らずとっても痛い。これは後で痛めるの確定だと自分自身を憐れむと、運命は質問攻めを喰らいそうになる。


「それでそれで、白髪赤眼の《死神》とゾンビ・パーティーはどうだった? やっぱり凄かった?」

「うーん。私は見てることしかできなかったから」

「見てるだけ? そう言えば動けなかったって言ってたけど、攻撃の手段を持ってなかったの?」

「ううん。そうじゃないけど……私の装備はどっちかを強力にする代わりにもう一つを使え無くするから」

「あー、そう言うデバフかー。致命的だねー」

「しかも時間も体調によって変わるからかなりバランスが悪い……」

「それじゃあ動けなくても仕方ないねー。んで、動けない運命を助けたのがその?」

「うん、白髪赤眼の死神さん!」


 急に顔を上げた運命の目はキラキラ輝きを放っていた。

 普段は少し死んだ目をしているはずの運命からは想像も付かない輝きだ。

 目を見開いて流石にドン引きする。華火はゴクリと喉を鳴らすと、運命の話を聴いた。


「華火がどんな印象を持ってるかは分からないけど、私は一言で言えばクルーでカッコいい人だったよ」

「《死神》なのに?」

「うん。格好はそうだけど、戦い方はシンプル……なのかな? 計算して余裕を持った行動を最善にして、的確に一つ一つって感じだったよ」

「そんなの奇襲されたら終わりだよ。うわぁ、《死神》って戦闘センスのことだったんだ。ぶつかったら強敵だぞ~」


 何故か戦うことを想定していた。

 だけど運命は自信は敵対したくなかった。

 むしろその逆を願っていた。


「私、あの人の力になりたい」

「えっ、運命が珍しいこと言ってる!?」


 華火は再度引いてしまった。

 けれど運命の目は完全にキラキラ煌びやかの中で、引かれたことを気が付いていた。


「私なんかじゃ役に立たないと思うけど、なんだか運命を感じたのかな?」

「流石は運命。その辺個性出てるよー」

「茶化さないでよ!」

「茶化してないない。それにそんなに力になりたいなら、パーティーでもギルドでも作ってみれば? そうすれば少しは力になれるはずだけど」

「パーティー……ギルド、私にできるかな?」


 運命は不安を感じてしまった。

 けれど親友の華火はドンと背中を腕を回して叩いた。


「なに言ってるの? まずは行動。やりたいことは全力でやるの!」

「い、痛い……」


 全力で背中を叩かれた。ヒリヒリして痛みが走る。

 けれど華火が励ましてくれたのは伝わった。

 運命は握り拳を小さく作ると、早速試してみることにした。


「うん。華火、私やってみる……ちょっと待ってよ!」

「もうすぐ登校時間だよ。早く教室行かないと」

「ま、待って!」


 先を行く華火を運命は必至に追いかけた。

 凸凹だけど、やりたいことを決めた運命(さだめ)運命(うんめい)は一人でに動かした。

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