表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/255

第54話 サバンナの最終決戦2

「私達の方が強いよ。だからあんな虎? には負けない」

「あったり前だよ! にしてもさ、サバンナに虎ってどんなチョイス?」

「確かに変だよね。この低い標高で。でもさ、あの虎はただの虎じゃ無さそうだよ」


 眼下では暴れ回る虎の姿がある。

 けれど口からは横に伸びた二本の牙と、背中には黒い二枚の鋭い翼が生えていた。

 明らかに只者ではない風格。その姿から、三日月の虎ことクレセントタイガーと名前が付いていた。


「クレセントタイガー。明らかにヤバそうだね」

「でもこのままこうしてても埒が明かないよ」


 残念ながら呪いの装備の弊害で、誰も遠距離武器を持っていなかった。

 だからいきなりになるが飛び降りて戦うことにする。

 先制攻撃は絶対に外したくない。そう思って音を消し、ギリギリで武器を振り下ろすことにした。タイミングを合わせ、同時に飛ぶ。


「それじゃあ行くよ。せーのっ!」

「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 グリムとフェスタは同時に飛んだ。

 するとフェスタは早速、大剣〈戦車の大剣槍〉を振り下ろした。

 クレセントタイガーの背中目掛けて大剣が落ちる。重量が増し、重たい一撃が空を裂くと黒い翼がピクピク動き、その瞬間後ろに飛んだ。


「嘘でしょ! それはないよー」


 ズドーン!


 大剣が地面に当たって、激しい地響きを上げた。とんでもない重量だと判る。

 けれど躱された挙句、地面に大剣が突き刺さったせいで硬直が発生。

 痺れて体が動かないフェスタは、目と鼻の先にクレセントタイガーの鋭い二本の牙が見えた。フェスタに突き付け、頭を狙って弾き飛ばさそうとするが、グリムの〈死神の大鎌〉がそれを阻む。


 カキーン!


 大鎌の外側の刃が触れあった。牙と刃が激しく震え、両腕に衝撃が走る。

 グリムはマズいと思い、一度距離を取るため半回転しながら弾いた。

 牙の先端に無理矢理ぶつけ、クレセントタイガーの目に目掛けて蹴りを喰らわせると、流石に痛がってクレセントタイガーも後退した。


「ありがとうグリム」

「それよりフェスタ、早く体勢を整えて。大剣を構え直すでも良いし、背負い直すでもいいから」

「分かったよー。全く、クレセントタイガーだっけ? こんなに強いの?」

「強いというよりも厄介だね。ちゃんと良いAIを積んでるよ」


 モンスター事に積んであるAIが違う。これはあくまでもグリムの持論だった。

 けれどクレセントタイガーはちゃんと強い。

 今のところ、背中の翼は音を捉え空気の振動で攻撃を予期し、二本の横に伸びたクワガタみたいな牙は硬くて当たったら即死だ。


「全く。ただでさえMEN特化で戦闘に役立たない私と重すぎる武器のせいでまともに攻撃の手数を稼げないフェスタ。この二人にこんなにテクニカルかつパワーのあるモンスターを当てるなんて……」

「全く倒せないよー。ってか近付けないよー」

「まあそこにこそ勝機はあると思うけどね」


 実際、クレセントタイガーはフェスタの攻撃を警戒して避けた。

 だとしたら当たれば間違いなく一撃必殺になる。

 それなら戦える。まだやる余地はある。グリムは完全にピンと来ていた。もう負けることはない。


「フェスタ、私が前に出る。少しだけ時間を稼ぐから、ゆっくり近付いて」

「ゆっくりでいいの? 走れるよ?」

「背負って走ってもダメ。そんなことしたら、せっかく視界の端に捉えた脅威が脅威じゃなくなるから」


 グリムは分かっていた。クレセントタイガーは確実にフェスタをフェスタの〈戦車の大剣槍〉を警戒している。

 それならいつでも振り下ろせるぞって状況が欲しい。

 そうでもしないと、また付け上がられる。そんな余裕、最初っから与える気はない。


「膝だけは気を付けてね。それじゃあ行くよ!」


 グリムは前に足を踏み出した。

 〈死神の大鎌〉を肩に掛け、クレセントタイガーの頭(即死判定)を狙って打ち下ろす。

 けれど牙に弾かれた。カキーン! と硬い音が響き渡り、両腕に激しい衝撃が伝わった。


(やっぱり硬い。だけど押せないことはない!)


 グリムは一切のけ反らない。ただ闇雲になって〈死神の大鎌〉を振り下ろす。

 縦に横に斜めにとにかく振り回せるだけ振り回す。風を切り、空を裂き、力の限り隙も暇も与えずに打ち込み続ける。

 こんな激しい真似ができるのはこれがアバターだからじゃない。ゲームのシステムでもない。あくまでもグリムだから。グリムが何でもできる天才だからだった。


「天才になったグリムってマジでカッコいい。もうなにを言うことはないよねー」


 フェスタも言われた通りゆっくり近付く。

常に大剣を構えている状態のおかげか、クレセントタイガーの視線の端に嫌でも入る。

だからだろうか、グリムだけに集中できない。

動きが鈍り、牙が微かに間に合わない。その都度グリムの振り下ろした大鎌が額に引っかかった。


「ガオゥ!」


 ようやくクレセントタイガーが鳴いた。

 これなら行ける。この隙があるなら倒し切れる。

 大鎌を振り下ろし、クレセントタイガーを更に窮屈に煽った。


「フェスタ、そろそろ行ける?」

「もっちろん! んじゃ早速……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 グリムはクレセントタイガーの牙に大鎌を引っ掻け引き寄せる。

 一瞬だけ軽くなった。前脚が空に浮いて不安定な体勢だ。

 その瞬間、同時にグリムも後ろに下がった。すると目の前にはフェスタが大剣を構えていて、全ての溜め込んだ物を解放し、力任せを武器に振り下ろした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ