第254話 火球で丸焼け!?
普通に考えたくても、ドラゴンの炎に触れたら死ぬよ。ドラゴンじゃなくても死ぬよ。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「フン!」
グリム達は飛び出した。攻撃をとりあえず仕掛ける。
誰か一人でも辿り着けばOK。
そんな甘過ぎる見込みも、火車龍には届かない。
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
鼻息一つで吹き飛ばされた。
体が軽く弾かれてしまう。
後ろに吹き飛ばされると、地面に倒れてしまう。
「みんな大丈夫?」
「は、はい……」
「な、んとかな」
グリム達は一応は無事だった。
けれどバカな真似をしたと揶揄する。
無鉄砲にも程があり、火車龍には通じなかった。
もちろん冷静に考えれば分かっていた。
けれど体が勝手に動いていた。
動いたから分かった。やはり火車龍はドラゴン種だ。
(確かに強いな。しかもこれはマズいかな?)
今の一瞬で火車龍は興味を失せる。
あまりの弱さに、貧弱さに、グリム達を虫同然に考える。
否、そもそもが背景の一部としか認識しない。
「くっ、やはり勝てんのか?」
「そんな……」
「真っ向勝負じゃダメ。かと言って回りくどい方法が通用するとも思えない。罠も……張れない」
既にここは火車龍の支配域。下手な真似はできない。
つまり万策は付き掛けている。
もちろん考えれば無限に策は浮かぶだろうが、それを実行できるだけの時間も労力もましてや火車龍の御前では不可能に近い。
「難しいかな」
「グリムさん……」
このまま引き返す手もあるが、楽に帰らせては貰えないだろう。
振り返った瞬間に焼かれる可能性は大いにある。
ましてや事情を後でフェスタに説明して、上手くタイミングが合うとも思えない。
そんなことになれば、一人で戦わせることになるのだ。
(ってことは、ここで勝てる未来を見るしかないかな)
グリムの思考が働く。可能性の扉を開く。
けれどグリムにもその余裕はそこまで無い。ましてや賢くも無い。
自分の力量を推し量ると、出てきた策に委ねる。少し危険だが、やってみる価値は十%ほどあった。
「リュウマ、少しだけどんぶりの注意を惹き付けてくれないかな?」
「どうする気や?」
「少しだけね。危険だけど、試したいことがあるんだよ」
このままだと埒が明かない。
火車龍の方が、圧倒的に強いのは確かだ。
それならば少しは無理をするしかない。
模索した思考の中、グリムは荒業を使う道を選ぶ。
「グリムさん、なにをする気ですか?」
「D、一瞬だけ、あの龍の視界を奪ってくれないかな?」
「ええっ!?」
グリムは無茶苦茶な頼みをする。
もちろんDは驚いてしまう。
けれどDが頼りだ。フェスタが居ない今、藁にもすがる思いになる。
「できるかな?」
「で、できますよ?」
「そっか。それじゃあ頼めるかな? 一番危険なことは、私がやるから安心して」
「ダメです!」
如何やらできるらしい。火車龍の視界を奪えるのならば、少しは希望が見える。
グリムはいつも頼りになるDに感謝をするも、何故か反論されて困った。
如何やら危険なことをするグリムに引っ掛かったらしい。
「ダメ?」
「ダメです。グリムさんだけ危険な真似をしたらダメです。心配です!」
Dは心配している。グリムが危険な真似に足を突っ込んでいるからだ。
全力で拒絶して引き戻そうとするが、残念。グリムは聞く耳を持たない。
代わりに傍に引き寄せると、自然と前傾姿勢になる。
「そっか。優しいね、Dは。でもね、やるしかないんだよ。この状況を打破するにはね」
火車龍にとって、グリム達は興味の対象でもない。
だから攻撃も仕掛けられないし、抵抗もされていない。
それなら少しでも興味を抱かれる前に叩くのが吉。
グリムの覚悟は決まっていた。
「だからお願い、D」
「グリムさん……」
「まあ、私はタダでは死なないからね」
グリムは相当なことが無ければやられはしない。
自他共に認める生存能力を信じる。
「死なないでくださいね」
「当り前だよ。私も死ぬ気は無いからね」
もちろん心配されるのは仕方が無い。
それでもグリムは死ぬ気はない。
死んで真っ暗な世界に、強制ログアウトを体験するのは懲り懲りだ。
「それじゃあリュウマ、頼んだよ」
「そりゃ構わんが……今からか!?」
「もちろんだよ。さぁ、行くよ!」
グリムの号令に合わせて早速仕掛ける。
まずはリュウマが先行して、邪魔などんぶりの注意を惹く。
「おらぁぁぁぁぁ、よう分らんけど、やっちゃるぜ!」
リュウマは飛び出すと、刀を抜いた。
どんぶり目掛けて振り下ろすと、どんぶり達は動きに釣られる。
自衛の本能が勝手に反応すると、リュウマに攻撃を仕掛ける。
パシュン!
「ぬぉ!?」
熱線が放たれる。真っ赤な光線状で、危うく焼かれそうになった。
けれどリュウマは体を捻り何とか躱す。
巧みにステップを踏むと、どんぶりの注意を背負う。
「これでどうだ、グリム!」
「充分だよ、リュウマ。後は……D!」
グリムは肝のDに叫んだ。
Dは言葉に耳を預け、グリムのため、勝つために魔法を唱えた。
「はい! 【光属性魔法(小):フラッシュ】!」
得意の光属性魔法を放つ。今回使うのはフラッシュ。目くらまし魔法だ。
丁度グリムの背中をバックに火車龍に近付く。
興味のない素振りをしていたが、瞼を開いていたのが仇となる。
眩しい光を直に浴びると、突然のたうち回った。
「ドラァァァァァァァァァァァァァァ!」
全身を地面に叩き付ける。目が見えなくなり、真っ暗な闇が襲う。
冷静な思考を掻くと、火車龍が弱く見える。
巨体が地面を叩くと、バシンバシン!! と地響きに変わる。
「グリムさん!」
「ありがとう、D。後は私が……」
「そんな攻撃、当たる訳がない」
暴れ回る火車龍の動きに翻弄されそうになったグリム。
けれど体を捩じり、急旋回を繰り返して距離を詰める。
目が見えないということは、情報の七割を制限したこと。
これならやれることは無限大。その中でも、グリムにはもはや狙いは一つだけ。火車龍の首だ。
「その首を貰うよ」
火車龍の体を踏み台にして飛び上がる。
未だに視界は奪ったまま。これなら行ける。
肩に掛けていた大鎌を振り上げた。目の前には、龍の首だ。
「取った……かな?」
グリムは大鎌を振りかざし、強襲を仕掛けた。
視界を奪っている今なら、確実に攻撃は当たる筈。
何よりもどんぶりによる熱線も無い。
リュウマが注意を一瞬だけでも惹き付けてくれたおかげだ。
それも時間の問題。この隙を突くしかない。
絶好の機会に恵まれると、グリムの振りかざした大鎌は、火車龍の顔を捉えた。
「行けます!」
「今だグリム、やっちゃれ!」
期待を寄せる瞳が背中を射る。
グリムは期待に応える気はない。
けれど応じようと努力すると、大鎌が火車龍を……
「ボファ!」
突然火車龍は口を開いた。真っ暗な世界、白い牙、赤い舌、全てがグリムの視界に入る。
もちろんそれだけではない。真っ赤な炎がグリムの視界を奪う。
火球が熱を生み出しグリムの肌を焼く。
死ぬ、確実に死ぬ。恐怖心が流石に芽生えると、グリムの思考は駆られる。
「はっ?」
攻撃を瞬時に辞めようとする。もちろん間に合わない。
それどころか、中途半端な行動が災いする。
大鎌を引き戻すと、火車龍に優位性を見出させてしまった。
もちろん見えてはいない筈。単純に恐れが空気として伝播したらしい。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!(熱い、熱すぎる!?)」
グリムの体は否応なく炎に包まれた。
突然の火球攻撃。しかも超至近距離。
火車龍の抵抗を見せつけられると、グリムは火球に飲み込まれてしまった。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。