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第252話 火車龍の降臨

結局倒すぞ、ドラゴン!!!

 グリム達は森の奥に向かった。

 アレだけ巨大などんぶりだ。

 流石に見逃すはずがない。


「グリム、こっちだよねー」

「うん、見えてるよ」


 どんぶりは大きい。おかげで目でも追える。

 グリムの【観察眼】からは逃れる術はない。


「あれ、下がって来ていませんか?」

「そうだね。もしかしたら着陸するのかも」

「あはは、UFOみたいだねー」

「油断しちゃダメだよ」


油断は大敵だ。特にここは得体のしれないダンジョン。

バカな真似は一切禁止。

グリムは固く誓うと、UFOの動きに注視する。


「おい、高度が下がり過ぎちゅーぞ!」

「そうだね。このままだと見えなく……」


 UFOは高度を下げていた。

 そのせいか視界から消えそうになる。

 けれどフェスタが走って追いかけると、薄っすらと縁が見えた。


「あっ、あそこだ!」

「完全に下りて来たね。急ごうか」


 グリム達は足早になった。

 急いでどんぶりの下に急行。

 地面を蹴り上げ土を巻き上げる。感覚で周囲を確認。

 どんぶりのすぐ袂まで向かうと、自然界の音が叫ぶ。


 バキバキバキバキバキバキバキバキ!


 凄まじい勢いで木を薙ぎ倒す。

 巨大どんぶりが薙ぎ倒した木の合間に収まる。

 ピタリと地面に着陸すると、グリム達は目の前だった。


「落ちて来たよ、どうするの?」

「どうするもなにも、少し待とうか」


 早速奇襲を仕掛けようとするフェスタを止める。

 肩を押さえて動かないようにした。

 完全に移動しないことを確認するまで待つことにする。


「動かないね」

「そうだね」


 目の前に着陸したどんぶりは動かない。

 休んでいるのだろうか?

 所謂完全防御形態と呼ばれる状態なのか、微動だにしない。


「あのグリムさん、これからどうして」

「とりあえず様子見かな。下手に手を出す訳にもいかないよ」


 まだ安全が確保されていない。

 ましてや何をしてくるのか挙動が分からない。

 恐らくはグリム達に尖兵を送り込んだ本体。

 となれば熱線による攻撃が、何処から飛んで来るか分からない。


「D、【気配察知】は使える?」

「は、はい。ONにしておきます」

「ありがとう。それで今の所は?」

「えっと……特に異常はありませんね」


 特に異常なし。つまり何事も無いことの裏返し。

 今の所はそれで安全を確保すると、グリム達はどんぶりを見張る。


「どうするがよ、グリム?」

「私に訊かれてもね。みんなはどうしたい?」


 グリムは全員の意見を訊く。

 真っ先に応えたのはフェスタだった。


「戦いたい!」

「それはダメ。二人は?」

「戦痛いねや!」

「そっか、そうだろうね」


 フェスタとリュウマは案の定。

 戦闘系なので、とにかく目の前の得体のしれない何かに戦いを挑みたがっている。


 もちろんそんなことは許さない。

 何故ならグリムとDまで巻き込まれる可能性がある。

 一蓮托生で死亡回数を増やすなんてバカな真似、流石に精神的に悪い。


「Dはどうしたい?」

「わ、私は、その、グリムさんに任せます」

「私に任せるって、自分の意見は……はぁ」


 Dに訊ねたが、意見が無かった。

 グリムは咎めるが、目が訴え掛けている。

 “グリムさんに従います”と熱い宣言をされてしまい、流石に溜息を漏らす。

 グリムはそこまで偉くはない。買い被られてしまった。


「少なくとも観察は必要だよ。下手に動いても危険だからね」

「でもさー……もう、じゃあこれでどうだ!」


 フェスタは退屈そうだった。

 だからかは知らないが、何か行動を起こす。

 地面に手を当てると、すぐさま投球体勢(フォーム)へ。

 軽く振りかぶると、何か投げ付ける。


「えいっ!」


 どんぶりを目の前にして何もしない訳が無い。

 もちろんグリムとDは何もしない。

 軽率なのはいつもフェスタだった。


「なにやってるの、フェスタ」

「石投げてみたんだよ」


 フェスタはどんぶり目掛けて落ちていた石を投げてみた。

 真っ直ぐ飛んで行き、どんぶりにコツンと当たる。

 けれど何も反応はなく、重力に身を任せ、石は地面に落ちた。


「勝手なことしないで欲しいな」

「でもなにも起こらないよー」


 確かに何も起こっていないのじゃ気掛かりだ。

 けれどそれならそれでいい。

 逆に言えば、何をきっかけに動き出すのか真相が不明なことくらいだ。


「まあ、なにも起きないならいいけど」

「そうですよね、グリムさん」

「むぅ。つまんなーい」


 確かに見ているだけは退屈だろう。

 けれどグリムは怪しんでいる。

 目の前に着陸したどんぶり。それに薙ぎ倒れたたくさんの木。

 まるでミステリーサークルの様に描かれると、グリムは退路を確認。


(いつでも逃げられるかな)


 どんぶりに移動速度や飛行距離を確認。

 これならギリギリ身を隠すことはできそう。

 頼りない細い糸を頼ると、グリムはつい口を軽くした。


「仕方ないね。少しだけ近付いてみようか」

「えっ、いいの!」


 フェスタは大いに喜んだ。

 目をキラキラ子供の輝きにする。

 些か不用心だろうが、今しかチャンスはない。

 そんな気がしてならず、早速リュウマが腰を上げる。


「それじゃあ行くで」

「リュウマ、先行し過ぎは……」


 「気を付けて」と言おうとした。

 けれどリュウマが前屈みになる。

 同時にどんぶりが不自然に動き出すと、ピキンと言う音が痛感する。


「うっ!」

「D?」


 Dが表情を濁らせる。

 グリムの目はその動きを敏感に捉えていた。

 もしかして、【気配察知】が警告を上げた?

 そう思って仕方が無く、リュウマを止めようとする。


「リュウマ、少し待って」


 しかし間に合わなかった。

 突然どんぶりは動き出すと、同時に意識を吹き飛ばすような威圧が飛んで来た。


「ファドラァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 けたたましい轟音が上がった。

 まさか石を投げただけじゃ変化が現れなかったのに。

 もしかすると、否、もしかしなくてもグリム達の存在を感知した。

 あのどんぶりの支配域(テリトリー)に入ってしまったのだろう。


「この声……もしかして」

「もしかしなくてもそうだよ!」

「がーはっはっはっ! 来るで、儂らの獲物が!」


 リュウマの言う通りだった。

 体が硬直するような威圧感に襲われ、顔を上げることができなくなる。

 おまけに真っ赤な炎が視界を奪うと、熱さの余り何もできなくなった。


「この炎、間違いない」

「グリムさん、私達は……」

「大丈夫。直撃はしてない……えっ?」


 炎による直撃は避けた。

 そのおかげで硬直も解除される。

 如何やら単なる脅しだったらしいが、グリム達は耐えきった。

 報酬として、どんぶりの真の姿を知る。

「アレが龍?」

「にしては不格好じゃなーい?」


 どんぶりが急に変形した。

 かと思えば、まるで別人。否、別龍だ。

 一瞬にして不格好ではあるが、胴体はカッコ良くなった。

 母体がどんぶりなこと以外は……


「そうだね。でも龍は龍だよ。油断しない方がいいかもね」

「はい! 頑張ります」

「うん、無理はしないようにね」


 相手がだれであれ、いつも通りに振舞う。

 そうでもしないと飲み込まれる。

 多分も何も、Dはそのタイプだ。


「あはは、行くぞー!」

「やろうぜ、ドラゴン対峙!」


 相も変わらないフェスタとリュウマ。

 この二人には驚きだ。

 けれどいつもの姿勢を崩さない。

 そんな二人に視線を飛ばすと、グリムも吐露する。


「さてと、ここまで来た以上、やるしかないかな……逃げられるけど」


 まだ逃げる余地は残されている。

 けれど目の前の獲物を逃す気はない。

 そんなフェスタとリュウマに囚われると、グリムも踊らされる気になった。

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